MAIN NOVEL
□存在感の存在
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後ろには、どこからともなく現れた黒い足跡が、壬晴の方へ転々と向かってついていた。
しかし、自分へと続く足跡の主はどこにもいない。
壬晴は声ならぬ声を上げると、素足のまま縁側から外に飛び出していた。
『はぁ、はぁ‥‥っ』
な、なななにアレ、何アレ!?
足跡!?
誰の足跡!?
てゆーかいつ家に入ったの!?
てゆーか誰!?
てゆーか土足!?
てゆーか誰!?
てゆーかこういうのって、何現象てゆーんだっけ!?
ドッペルゲンガー!?
ドップラー効果!?
ドップラーゲンガー!?
ドッペル効果!?
違う違うっ
えーとえーと‥‥‥
『ラップ現象だっ!虹一ィィ!!』
そのご壬晴は、いつも以上に青い顔で相澤家に向かい、虹一に助けを求めに行ったそうな。
ーーーーーーー再度六条家・縁側
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
壬晴が去っていったその後、足跡の主は床のタンスの陰でうずくまっていた。
「‥‥‥‥‥うぅ」
黒い足跡の正体。
それは、雪見の目を忍んで六条家に遊びに来た宵風のものだった。
六条家に着き、前回の如く壬晴の部屋の窓から侵入するも、そこに壬晴の姿はなく、仕方なく家内を探し回っていた宵風。
茶の間、厠、玄関、台所。
このいずれにも居なかったので、最後に縁側を探すと、ひなたぼっこをしながら眠っている壬晴を発見。
やっと見つけたが、眠っているようなので帰ろうと思い、近くにあった毛布を「ぽふ。」と壬晴にかけ、口惜しながら帰ろうとした矢先、宵風の歩みを阻害するものが現れた。
それは、テレビのコードだった。
両の足にコードが複雑に絡み付いて、うまく動けない。
転びそうになり、「ガタッ」と音を立ててタンスに捕まるが、手でほどけばほどくほどコードは足に絡み付き、ついには「ドタッ」と床に倒れる始末。
引き千切ろうかと思ったが、前に同じようなこと雪見宅でやったときに、雪見に小酷く叱られたのを思いだし、躊躇する。
「‥‥‥‥‥み」
仕方なく壬晴に助けを求めようとしたが、その時は既に壬晴の姿はなく、無造作に蹴散らされた毛布だけが残っていた。
「‥‥(僕、ここに何しに来たんだっけ‥‥‥)」
独り六条家に残された宵風くん。
帰ってきた壬晴は、コードにグルグル巻きにされた宵風を見て、果たしてなんと言うのだろうか。