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□甘い鼓動
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最近なにやら女子達はそわそわ落ち着きがない。男子は女子を見ては何やら意味ありげに笑っている。今日は2月12日。

「あー……そっか。明後日ってそうなんだ」

自分の席でぼーっと回りを見ていた俺はため息を着きつつ、前で話している二人に少し視線を戻した。いつもよりにこやかに獄寺君を見ている山本といつも通り気にしない獄寺君。たわいもない話をしているが、こちらには気がついてないようだ。二人はモテるから当日はいっぱいチョコ貰うんだろうなと目を細める。まぁどうせ俺は貰うって言っても、1番欲しい京子ちゃんからのチョコは義理で、嫌な訳じゃないけどハルの怪しい本命チョコと……母さんのお情けチョコくらいだろうからあんまり夢も希望もないけど。

「十代目?どうかしたんですか?」

「ん?ああ、別に?……あれ?山本は?」

考え事をしている間に山本の姿がない。俺は回りを見てから獄寺君に聞いてみた。獄寺君は少し不思議そうにしてから苦笑した。

「山本ならついさっき、部活の奴に呼ばれて廊下に出ていきましたよ」

そっか。と呟くと廊下の方を見る。

「獄寺君ってさ、山本にチョコあげるの?」

廊下の方を見たまま呟いた俺の言葉に、獄寺君がズッコケル。俺が大丈夫かと、慌て立ち上がって様子をみると、獄寺君は真っ赤になって口をぱくぱくしている。

「な、なんで俺がチョコって!………っ!」

「やっぱりあげるんだよね?うん。山本喜ぶだろうねぇ」
俺がしゃがんで小声で呟いて苦笑すると、落ち着きを取り戻した獄寺君が苦笑を返して俺を見つめた。立ち上がってから、俺を立ち上がらせて回りに聞こえないように呟く。

「…………そうだ十代目!一緒に作りましょう」

「へ?」

笑顔で俺を見た獄寺君は俺の肩を叩いて満足げに笑った。

「渡す人いなかったら……んー。あ、そうだ!なんなら俺が貰いますし。最近は男から女子にあげるチョコってのも流行ってるみたいっスよ」

獄寺君が鞄に入ってたファッション雑誌を広げて説明してくれた。男性誌なのだが覗き込んでみると、初心者にも簡単に作れるチョコの作り方も載っている。俺は視線を獄寺君に戻した。

「いいの?一緒に作って?」
「いいんですよ。どうせ一人で材料買いに行くのも作るのも、抵抗あって諦めかけてたとこなんで」

「で。やっぱり渡すんだ…………獄寺君」

「う……山本には内緒にしといて下さい」

「うん!わかった〜」

俺達は笑顔で二人団結する。そこでふと作る場所や材料はどうしようと疑問が過ぎった。

「作る場所どうしようか?たぶん家だとちび達いるから作れないし……何よりビアンキが……あと山本明日部活だっけ?」

「作るなら俺ん家で作ればいいですよ。なら誰の目にも付きませんしね。それに山本は明日、部活だから材料も明日買いに行きましょう」

二人で雑誌を見ながら計画を練ると、意外と楽しくなってきた。そこでふと完成したら誰にあげようかを考えてみた。……多分あげたら喜んではくれるだろうけど。確か…………甘いのは嫌いって言ってたことが引っ掛かり少し悩む。とりあえず、大まかに計画が決まった頃に、廊下にいた山本が帰って来たので三人で帰ることにした。






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