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□真面目な鼓動
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「なぁツナ。獄寺……俺の事どう思ってると思う?」


そう聞いて来た山本に綱吉は目を点にして見返す。今獄寺は先生に呼び出されここにいるのは綱吉と山本のみ。綱吉は今更ながらの質問に眉を下げて山本をみた。


「少なくとも嫌いな相手とは二人で出掛けたりはしないんじゃないかな……」


綱吉が二人の関係を山本にカミングアウトされたのは去年の獄寺の誕生日だった。山本と獄寺はそれから二人でちょこちょこ出掛けてデートしたり、旅行に行ったりしていたので、てっきりうまく行っていると思っていた綱吉は山本をみつつ首を傾げる。

「大丈夫……だよな?」

「なんかあったの?」

綱吉が聞くと苦笑する山本を不安げに綱吉は見上げた。大事な友達だから出来れば二人には幸せであって欲しい。そう思う綱吉は山本の様子を見て最近の様子を思い出していた。


「誕生日に獄寺の家に行こうと思ったら断られてさ…………」


「え?なんで?」


「わかんね。何か用事とか誰か来るのか聞いたんだけど教えてくれなくてさ?」


綱吉はきょとんと山本をみると、さーっと顔を青ざめさせた。

「わ、忘れてた…」

「へ?何が?」

「獄寺君……誕生日だよね?今日…」

「ツナ……今思い出したのな」

山本が苦笑して綱吉の頭を撫でると、どうしようとオロオロしだす綱吉にまーまーと宥める。すると急に顔をあげた綱吉に山本はキョトンと綱吉を見た。

「俺協力する!せめて何かしないと!………獄寺君山本のこと絶対嫌いじゃないはずだもん!なんかあるんだよ!」

変な方向にやる気を出した綱吉は山本を見てガッツポーズをした。じゃあ単刀直入に聞いてくると職員室に向かおうと歩きだした。


その時。


いきなり綱吉は何かにぶつかった。アイタタと前をみると獄寺が不思議そうに綱吉を見下ろしている。綱吉はぱっと表情をかえると獄寺を見上げた。

「獄寺君!最近なんかあった?」

「なんかってなんですか?」
獄寺は綱吉が怪我をしていないか確認している最中に聞かれた質問に心底不思議そうに首を傾げると、反対に綱吉は困った顔をして俯いた。あー、そうだったどうやって獄寺に切り出そうかなと、考えていると、急に背後から肩を掴まれる。

「………何してるの君達」

振り返ると後ろに立っていたのは、不機嫌気味な風紀委員長こと雲雀と頭を抱えている山本。山本は苦笑して綱吉の首根っこを掴んでから獄寺に引っ付いてつかまったままの綱吉を獄寺から引きはがした。


「えっ?!ヒ、ヒバリさん?!……なんでここに?」

「……何してるの君達」

雲雀にじいっと見つめられて同じ質問をされた綱吉はいたたまれなくなって、困った顔のまま雲雀から視線を反らせた。


「その………ちょっと獄寺君と話があっただけなんです」

「俺に話ですか?」

「そう!獄寺君今日なんか用事あるの?」

綱吉は雲雀を見ないようになるべく明るく聞くと、獄寺は気まずそうに山本を見てから綱吉に視線を戻した。

「用事は……あると言えばあるんですけど」

「どんな?誰と?」

綱吉は興味深々に獄寺を見て詰め寄る。獄寺はというと言いづらいのか山本と綱吉を見比べて、考えこんでしまった。


「実は姉貴と…」

「ビアンキは今日はリボーンの用事でイタリアだよ」

「じゃなくて!シャマルと……」

「シャマルなら朝の時点で今日は同伴出勤だって騒いでたよ?」


「………負けました」


「よし!何で用事あるのか教えてくれる?」

「それが……」

脱力する獄寺に対して綱吉がにこーっと笑うと、獄寺が綱吉にゴニョゴニョと耳打ちをする。フムフムと綱吉は頷くと赤くなっていく獄寺を見て、綱吉は呆れた眼差しを山本に向けた。山本は頭にハテナを飛ばしつつ綱吉を見つめ返す。


「……山本が悪い!」
「ですよね」

綱吉の一言に獄寺が苦笑して同意する。そして綱吉はさっきから茅の外で不機嫌そうにしている雲雀に近づくと、袖をひっぱり耳打ちをする。雲雀は一瞬顔をしかめるが綱吉を見てから山本をじーっと見つめた。

「僕は山本武のが正しいと思うけど……獄寺隼人のその主張はイマイチ僕には理解できない」

「えー!おかしいですよ!悪いのは山本です!」

「え?ツナ?どういうことだよ?」

山本が綱吉を見て説明を求めると、綱吉は不満そうに山本を見上げた。


「山本、獄寺君に何て言ってお祝いしようとしたか思い出してみてよ」

「獄寺ん家いって誕生日祝っていいか?って」

「その後は?」


「獄寺寝かさずにオールナイトで耐久戦?」

「………」
「………」
「………それのどこがおかしいの?」

雲雀だけが真顔で綱吉と獄寺を見つめて顔をしかめていると、綱吉がため息を着いてから獄寺をみる。

「たぶん根本的に山本には言わないとわからないんじゃないかなぁ………」

「オ、オレが自分で言うんですか?」

「だって………反対の立場なら獄寺君も絶対そうするでしょ?」

獄寺が眉を下げて綱吉をみると綱吉は頷く。しばらくして雲雀に視線を向けて苦笑した。獄寺はしばらく考え込む。

「おい、山本」

「なんだ?獄寺?」

「………………お前体力無限過ぎんだよ。俺の体力とか身体のこととか………考えろよな」

「……へ?」

「…………絶倫過ぎるって言ってんだ!」

やっと理解した山本は赤面した獄寺の叫びでやっと理解したのか軽く手を叩いた。すると山本は明るく笑ったかと思ったら、獄寺の肩を掴んでそうかそうかと何やら納得している。

「じゃあペース考えたら獄寺ん家行っていいんだよな?」

「そ、そう言う事になる………………な」


二人が丸く収まった所で綱吉はホッとして胸を撫で下ろした………のだが、綱吉は隣で腕組みして不機嫌絶好調な己のパートナーに気付いてギギギと音がなりそうな雰囲気で隣を見上げた。


「綱吉?さっきからこの僕を綺麗に無視するなんていい度胸してるね?………そんなにお仕置きされたいなら言えばいいのに」

「ひいっ!違いますからヒバリさっっ!………痛ぇぇっ!」






そしてまた綱吉が獄寺に誕生日のお祝いの言葉を言えたのは次の日になってからになったという。


《完》

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