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□揺れる心
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あいつが語り出すまでは、こんな気分になるとは思わなかった。
本当の気持ちってどこにあったんだろ。
「髪が長くて、可愛くて、優しくて、すぐに怒って……すぐに泣いて……………人が傷つくことが嫌いな女性でしたよ。彼女は」
公園のベンチでジュースを飲みながら、軽い口調で話され呆気に取られて苦笑いを浮かべる。
でもいつもの笑みと違って優しい笑みを浮かべて語る骸は、不思議と幸せそうには見えずに戸惑う。
「そう………」
「マフィアに殺されてしまいましたけどね。僕の目の前で………」
「……えっ」
ふっと消える笑みに困って骸を見上げる。すると骸が悲しげな笑みで俺の頭を撫でる。
「そんな顔しないでください。君が聞いたのでしょう」
骸はふわっと微笑むと、視線を俺から外して正面を向く。どこか、泣きそうに見えるその様子に同じく、俺も正面を向いた。
「俺、ホントに何もしらないから、何でおまえがマフィアを憎むとかさ?…………知りたいっておもったから」
「興味本位は身を滅ぼしますよ」
「だろうね………ん?何?」
苦笑して顔をかくと、骸に視線を戻す。いつの間にか俺を見ていたらしい骸と視線が合い、戸惑う。
「知らないより知りたい…彼女もよく言っていました。僕はそんな彼女を助けることが……出来なかったんです」
――……。
昔、あるマフィアの花嫁に一人の少女が捧げられた。少女は気高く、芯の強い……汚れなき心の娘だった。娘には、恋心を寄せる青年がいた。青年も娘を愛していた。
だが、二人の想いは遂げられず…………娘はマフィアの長により、無残に殺されてしまった………。
青年は言う。
『僕は許さない。あなた達を……マフィアを!』
青年は誓う。
『僕はマフィアを根絶やしにする!』
青年はまた巡る運命の中でまた………
憎み怨む……。
――――…。
「君は彼女じゃない。僕は君が君だから惹かれた」
「骸…」
「またマフィアは僕からまた……愛する人を奪うんですね」
投げやりな口調に胸を締め付けられつつ俺は、何も出来ない自分に歯痒さを感じた。
「『……ごめんね』」
「えっ……」
はっと顔をあげた骸に微笑んで立ち上がる。骸の前に立つと何故か自然と抱きしめていた。
「俺はマフィアにはなりたくない……」
「綱吉くん……?」
「でも、俺が望まなくても、きっとみんなを血塗られた運命から助けるためには、俺はボンゴレのボスになるしかない……………みんなを殺させたりしない」
俺の勘だけど、俺が完全拒否した時点でみんなはボンゴレに殺されるだろう。味方にならなければ、俺達は害以外の何者でもなくなるから。ボンゴレリングに選ばれたからには、拒否は死と同意語だ。
俯いた俺は自分の手をにぎりしめてから、笑みを浮かべて骸に視線を向ける。
「それより、いつもの骸みたく笑ってちょかいかけてくれないと、調子狂う」
骸から離れるとベンチに座った。いつもの骸じゃないみたいな感覚にムズかゆくなって笑ってごまかす。
「やっぱり僕は君が好きなようですよ。どうしようもなく……ね」
骸に抱きしめられ、赤くなってそっと見上げる。柔らかい笑みに笑みを返す。
「俺も嫌いじゃないよ。骸のこと」
告げた言葉に恥ずかしくなって慌てて離れようとするが頬に手を添えられ、動けなくなった。
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