キリ番
□大人の我が儘☆子供の優しさ
1ページ/8ページ
目が覚めて天井を見上げると、知らない照明に知らない天井。聞こえるいつも聞くような朝のニュース。確か今日は日曜で、朝から母さんとちび達は買い物に行くと言っていたので、ゆっくり遅くまで寝ていようと思ってたのに……。
「どうして一流ホテルのスイートで俺は寝てるわけ?」
その呟きに開いてるドアから見えた男が振り返る。そこにいた男が目に入った途端に一気に青冷める。
「俺が連れて来たからだな」
「ザ、っ?!…………ひぃっ!人掠いっ!」
「人聞き悪いこと言うな、カスが!」
いやいや、無理矢理連れてくるのをひとさらいと言わずに何て言うんだろうか。教えて欲しい。そこにいたのはボンゴレ本部で軟禁されているはずのヴァリアーのボス、ザンザス。なんでここにいるんだろうと身を引きながら、俺は起き上がった。ふと確認するといつも着ているパジャマのままで、少し安心して胸を撫で下ろす。
「…人掠いじゃないなら、なんで連れて来たのさ?」
「俺の明るい未来計画のためだ」
俺はベッドから降りると、とことことザンザスの近くに来る。明るい未来計画と聞いて首を傾げる。何その幸せ家族計画みたいな計画と内心思いつつ顔を引き攣らせる。
「カス!とりあえず嫁に来い」
「無理!無理無理無理!」
「………即答しやがったな」
俺が驚きつつ即答するとザンザスが引き攣り笑いを浮かべている。
「だって俺男だし、だいたいまだ未成年だから結婚出来るわけないじゃん?」
「じゃあ家光に許可貰えばいいんだろ」
「いやいや、問題点違うし!」
ザンザスが睨んで俺を見つめてくる。う………怖いからやめて欲しいんだけど。
「……とにかく、カスなお前は大人しく俺様の嫁になっとけばいいんだよ。あとは俺の天下だからな。お前を手に入れることが、ボンゴレを手に………どうした?」
「それって政略結婚じゃん………俺、愛のない結婚はしない主義だから、そんな理由ならザンザスとは結婚出来たとしても絶対結婚しないよ」
俺は俯いて拳をにぎりしめて呟くとまっすぐザンザスを見つめた。するとザンザスが一瞬驚いた顔をして、目を細め立ち上がる。俺の側まで歩いてくると俺を見下ろす。
「じゃあお前が俺を愛せばいいだろ。なら問題はない」
「あるよ。俺は相思相愛がいい」
「……我が儘言ってんじゃねぇ」
ザンザスが顔をしかめて俺の顎を掴み上を向かせる。どっちが我が儘なんだよと内心悪態をついて思う。視線を上げてザンザスをまっすぐ見つめる。
「はぁ…………あのさ、ザンザス?ザンザスは恋とか愛したこととかないだろ?」
「………恋?はん!そんな甘えはいらねぇ」
「甘えなんかじゃないと思うけど。人を愛するって素敵な事だって俺は思うけどな」
呆れた様子で溜息をつくとザンザスが片眉をあげて顔をしかめた。俺がザンザスの顔を見つめていると、ザンザスがしかめたまま俺を見つめ返してくる。
「……お前は俺をどう思ってるんだ?」
「え?ザンザスのこと?………特に今はなんにも?」
俺がそう答えると急になんとも表現しがたい怖い顔になったザンザスに怯えてしまい後ずさる。ザンザスの手はそのままにわなわな震えている。しばらくブツブツ呟いたかと思うと、急にカッ!と俺を見据えた。
「今日はお前は帰れ。後日作戦を変えてお前に挑むことにする」
「は?……あー……じゃお言葉に甘えて帰……って……このままじゃ帰れないよ、なんか服ない?………あ、ここにあるクローゼットならなんかあるよね?」
「あ!待てカス!」
俺がキョロキョロするとクローゼットが見えたので勝手に開けてみる。………と、広がっていたのはクローゼット一面に貼られた俺のおそらく盗撮写真。…………黙ってクローゼットのドアを閉める。振り返ると後ろで固まってるザンザス。そのまますたすたザンザスに近付くと、ザンザスの体をペタペタ触って財布を取り出し5千円程抜き取る。
「…帰る!」
勢いよくドアを閉めて、俺は部屋を後にした。
⇒