□在り得ない笑顔と
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現実:現に存在すること。
また、そのもの。辞書には
そう書いてある。とすれば
、今わたしが考えているこ
との全ては虚ろなものなの
だろうか。青いなあ、と空
を見上げるのも、先生の言
葉は眠りに誘う呪文みたい
だ、とか思うのも、全部。
つまりそれは、わたしが心
のいちばん柔らかいところ
においてある「恋」というも
のすら、仮想だといってい
るようなものだ。だけど、
いま心に「確かに存在する」
のに、わたしはそれを知っ
ているのに、説明だってで
きるのに、なのに、それを
一角獣やらネッシーやらと
同じくくりにいれてしまい
たくはない。決して。  

なんだか泣きたくなって、
窓の外から目を外した。忘
れてたけれど、今は授業中
だった。わたしの席はいち
ばん窓際にある。だから窓
の外も、教室の様子も、す
っかり見渡せる。彼の、こ
とも。沢田くんと笑って、
獄寺くんとは口ゲンカして
。(ずっと笑ってるけどね)
いつもいつもわらってる、
太陽みたいな彼。だけど、
あの笑顔はきっとツクリモ
ノ。剥がしてしまえばうす
くて、もろく崩れるような
ものだ。きっとね。   

ああそれなら、わたしの気
持ちも仮想でいいんじゃな
いか。彼の笑顔もわたしの
気持ちも、どっちにしても
世界中どこにも存在しない
ものなんだから。ねえ、山
本武くん?すきだよ、あな
たの「仮想」ごと。    


在り得ない笑顔と
(仮想:かりに想定すること)
(また、そのもの。)




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