□うそ、うそ、うそ
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沢田綱吉、あたしはあんたが嫌いだ。

初めて会ったとき、彼女にそう言われ
た。突然だったから驚いて、なんで、
って聞いたら、理由はないけど、って
答えられた。だけど、いくら嫌いって
言われてもディーノさんのとこから引
き抜かれてきた俺の秘書兼偵察係だか
ら仕事は頼まなきゃだから、それから
1ヶ月間は他の人たちと同じように口
頭で任務頼んだりしてた。だけど、そ
の度に嫌そうな顔をするから、何が嫌
なのか聞いてみたら、彼女は「ボスに
近づくのが嫌なだけ」ってさ。そんな
こと言われたらもうどうしようもない
から、それからはずっと紙面で頼むよ
うにしてるんだ。もう5ヶ月くらいに
なるのかな。

珍しく俺の部屋に来てエスプレッソを
飲もうとか言い出したリボーンにそう
話したら、リボーンは急に舌打ちした
。なに、俺なんか悪いこと言った?

「お前馬鹿だろ」「はあ?!なんでだ
よ!」「やっぱり3年くらいじゃまだ
ダメツナか。お前キャバッローネから
の推薦状ちゃんと読んだのか?」「え
?まあ目は通したけど」「隅々まで読
んでみろ、しっかりな」「は?ちょ、
待てよリボーン!」        

制止する俺の声を無視して、エスプレ
ッソと共に部屋を出て行ったリボーン
をぼんやり見送って、ちょっとしてか
ら推薦状を取り出して眺めた。これに
何があるって言うんだ?、と呟いてか
らそれを読み始めた。       

*****************

最後まで読んで、さらにそこに挟まれ
ていたディーノさんの手書きのメモも
読んでやっと、リボーンの台詞の意味
が理解できた。書かれていたのは、彼
女についての備考。曰く、(こいつは
なんでも反対のこと言うからな、そこ
んとこ理解してやってくれよ!)俺、
なんてことしてたんだろうか。自己嫌
悪に陥りかけた時、ドアが控えめにノ
ックされた。           

「誰?」「…あたし」「(わ、)入っ
ていいよ!」「失礼します」ガチャ、
と音を立てて開くドア。「どうしたの
?急に来るなんて」「あの、ボス、あ
たし…」「な、なに?」「あたし、ボ
スのこと大っ嫌いです」「え、」「ボ
スなんかどっかに行っちゃえばいいん
だ」「ちょ、まって」「待ちません!
もういいですから、失礼しました!」

そう身を翻す彼女の細い腕を掴んで止
めたら、俺に背を向けたまま俯いた。

「ごめんね、今まで」「…」「気付い
てあげられなくて、ごめん」「ほんと
は、」「うん、」「ほんとは、すき」
「…知ってる」「ボスは?」そう言っ
て、くるり、振り向いた。「すきだよ
、オレも」「…別に嬉しくない」「あ
はは、オレも嬉しいよ」


うそ、うそ、うそ

(あまのじゃくなきみのことば)
(これからはちゃんとわかるよ)

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