□はざまで
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ああ、むなしい。世界
はなんて空虚なの、と
息を吐く。部屋の窓か
ら見える街路樹の、紅
く色づいた葉が風に吹
かれて散ってゆく。ひ
らひら、      

なんだろう、この虚無
感は。空洞感とも呼べ
るかもしれない。心臓
のあたりの、本来ある
べき何かがぽっかりな
くなっている。今まで
気にもしなかったのに
、一度意識してしまえ
ば後は広がって広がっ
て広がって、最終的に
は自分がそれになった
ような錯覚がのこる。

色の抜け落ちたカメレ
オンみたいなあたしに
再び色をつけられるの
は彼しかいない。赤と
青の虹彩の持ち主、六
道骸。彼ならあたしを
助けてくれる。この泥
ぬまから抜け出せる。
うすく霧のかかったよ
うな思考の彼方に君が
見える。たすけてむく
ろ。あたしにはもうあ
なたしか、     

「起きなさい、もう日
が高い」      
揺り動かされて目を開
けると、そこには愛し
いあなた。不安をかき
けすように強くしがみ
ついたあたしを、骸は
離したりしない。  
「大丈夫ですよ、何も
心配することはない」
「…うん」     

また1枚、葉がおちた


  はざまで










駆け落ちした2人、不安ゆえ精神不安定なあなた

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