□赤を忘れられない人形
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みーんな、殺してきたよ。

そう微笑んで言うわたしを
、哀しそうな目で見返す蜂
蜜色の髪の彼。返り血を浴
びて房になったわたしの髪
と違って、それは綺麗で。

ねえ、褒めてくれないの?

わたしの言葉に、彼はしぱ
しぱと瞬きをして口を開こ
うとする。けれど咽の奥で
さ迷った声が出て来ること
はなく、口は閉じられた。

静かに目を伏せて彼が呟く
のは、わたしの名前。そし
て彼が紡ぎはじめる言葉の
羅列を、わたしは認めるこ
となどできはしないのだ。

こんなことに、マフィアな
んかに、巻き込んでごめん
。君の手を血に染めさせて
、ごめん。真っ白だった君
を守れなくて、…ごめん。

そんなこと、ないんだよ。
ツナに着いていくって決断
をした高校生のわたしを、
ほめてあげたいくらいなん
だから。ここにいれば、ツ
ナと一緒にいられる。確か
に人を殺すのは辛いけど、
今のわたしにとっては、こ
のボンゴレが、わたしのた
ったひとつの居場所が、大
切でならないの。それに、
日本を出るとき既に、真っ
白のわたしはもういなかっ
た。ツナたちには言わなか
ったけど、あの日、イタリ
アに発つ前日に、わたしは
もうわたしではなくなって
いたんだよ。家族の赤は、
わたしを変えた。殺された
みんなの赤を忘れたくて、
敵の赤を覚えるようになっ
たの。だからツナは、悪く
なんてないんだよ。それに
ね、ツナ、あなたの頬を流
れる透明が、わたしの心を
癒してゆくから、だからわ
たしは大丈夫。心配しない
で。大丈夫、なんだから。


赤を忘れられない人形

すべては君のために。


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