短編

□(高杉切甘)素直になれない
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そんな奴等でさえも、今の俺には
尺に触るモノでしかなくて、表よりもさらに薄暗い路地裏へ足を運んだ。



案の定誰も居らず、トンッと壁に寄り掛かった。


その間を澄んだ夜風が吹き抜け、俺を揺らす。

暫く目を閉じ

胸ん中につっかえてんるモンも、吹き飛ばしてくんねェか…

なんて、らしくない事を思う。





















―…晋助っ









瞬時に目を開けた。













「名無しさん……」





あいつが俺を呼ぶ声がした。
辺りを良く見回した。
















「ククッ…妙な所へ来ちまったみてェだなァ…」




この暗さ

空気の悪さ

通気孔


良く覚えてる…




名無しさんと初めて逢った場所だ。















「ったく嫌な場所だ…こんな所に思い入れがあるなんてな…」



何年前だっただろうか。

あの時の光景が鮮明に思い出される。










たしか…


あいつ野郎共に襲われかけてたんだったな…


あいつの嫌がる顔

三人のニヤけた面


その内の一人は殺ったが、今思えば後の二人も殺っとけば良かったと、今更ながら後悔。

あいつに触れた事に、やけに苛立った。


良く考えたら、またあいつが襲われる可能性だってある。

不甲斐ない自分が許せない…




















「……何であんな事云っちまったんだろうな…」











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