短編
□(土方切甘)言葉はいらない
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「名無しさんさん」
「は、はい…」
「先程云った事やってくれた?」
「あ、いえ…」
「何してるの?早くしてよね、グズ」
私は真撰組女中。
何処の組織にも、それを治めるリーダーはいるもので、もちろん此処にも例外はない。
椿 佳江さん
厳しいし冷たい感じだし、椿さんにいじめられて女中を止めて行った人はたくさんいる。
先日椿さんによって、私より少し先に入った女中さんが辞めてしまったから、椿さんの次のターゲットは私に絞られたらしい。
でも、私はそんないじめなんかで挫ける分けにはいかない!!
だって─…
「名無しさん」
「土方さんっ」
最愛の人
土方さんがいるから
廊下ですれ違った。
頭をポンと軽く叩いて行くの。
周りに誰も居ない時だけだけどね。
それだけで、どうしようもなく嬉しくなる。
もちろん、土方さんに心配かけるのが嫌だから、椿さんにいじめられている事なんて云っていない。
いや、仕事の邪魔になるかもしれないなんて思うと、云う訳にはいかない。
だから、絶対挫けないし、一人で頑張るって決めたの。
「お疲れ様です」
そう云った私に、土方さんは優しい顔になる。
この表情も大好き。
「名無しさん、」
途端、土方さんに名前を呼ばれた耳元で囁かれる。
「次の非番、どっか行こうな」
土方さんの吐息が耳にかかる。
きっと私の顔は真っ赤。
秘密にしてるんだけど、バレてしまいそう。
「……はいっ//」
小さく返事をした。
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