短編
□(土方切甘)言葉はいらない
4ページ/5ページ
「土方さん、失礼します名無しさんです」
入れ、と云う声が聞こえて土方さんの自室に入った。
愛しい人に会う為じゃない、もちろん…
「椿さん」
「あら名無しさんさん、仕事終わったのかしら?」
「はい、報告に…」
やっぱり。
私の読みはみごと的中した。
椿さんは書類整理する土方さんの隣で、凛と座っていた。
゙なんでアンタが此処にいんのよ゙
云ってやりたいけど、私の様な下っぱにそんな勇気なんか有るわけない。
「椿、」
「はい、土方さんっ」
「悪いがもう出てってくれねェか」
「あら、まだお話ししたい事が…」
「さっきも云ったが、俺ァ仕事中だ」
土方さんの言葉に、少し笑顔になる。
椿さんに見つからない様、頑張って抑えたけれど。
椿さんは、仕方なく俯きかげんで腰をあげる。
「すみませんでした、土方さん。またお邪魔させて頂きますね」
゙もう来ないで゙
おさまれ、わたし。
帰り際に椿さんとバッチリ目が合った。
その目は、普段よりも冷たく怖かった。
「私の土方さんに
近付かないで」
─…え
なんで?
なんであなたに
そんな事云われなきゃいけないの?
土方さんは貴方のじゃない、
゙私のなのにっ゙
土方さんの目を見る事なく、そこを後にした。
土方さんが呼んでいた気がする。
でも…
あんな事云われて
もう何も
聞こえないよっ、
.