短編
□(高杉甘)隣の温かさ
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畜生………この俺が風邪何かにかかるとはなァ…
「晋助、大丈夫?」
さっきから横に居て、声を掛けるのは俺の愛しい女。
名無しさん。
「辛い?」
「あぁ、平気だ」
「本当に?」
悪魔でも、俺は風邪なワケで、大して辛くもない。
2、3日寝てれば治る。その位軽いものだ。
ソレを名無しさんは、差も大事かの様にしつこく聞いてくる。
愛されてるのが感じられて嬉しいが、あまりにも同じ事を繰り返して聞くから少しづつ、苛立つのもまた事実だ。
「大丈夫だから少し出てってくれ」
俺はぎこちなくそう云った。
「…うん」
寂しそうに云うと、名残惜しそうに部屋から出ていった。
俺はそんな愛しい女の姿を見て、やるせなくなって目を瞑った。
「ちょっと云い過ぎたな…」
小さな声が部屋に響く
名無しさんが居なくなった部屋は妙に色がない。
暫く一人で俺はふと、寂しさを覚えた。
一人で居るには、ちよっと広い空間
大丈夫だとは云ったつもりが名無しさんが隣に居ないだけで胸ん中に穴が空いたような感じで、自分らしくもないと鼻で笑った。
俺がそんな事をぽつりぽつりと考えて幾分経った頃。
きっと部屋の外に居るんだろうと思って名前を呼んだ。
「名無しさん」
返事が無い。
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