短編
□(高杉切甘)素直になれない
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月が輝き、雨上がりの空を照らす頃。
爽やかな春が通り過ぎ、真っ赤な陽が差し込む季節になった。
「名無しさんが来なくなって3ヶ月かぁ…名無しさん……どうしてっかなぁ…」
「煩せェぞ銀時」
俺達は、相変わらず山小屋に暮らしてた。
縁側に寝そべっている銀時が、暑中口にしている台詞。
「高杉、お前も気にはならないのか?」
ヅラの言葉に反応する。
確かに、俺も気にはなっていた。
「お前ェ、やっぱり名無しさんに何か云ったんじゃねーの?迎えに行ったんだろ?なんで帰って来ねェんだよ…」
「知るか。此処はあいつの家じゃねェ。帰るもクソもねーんだよ」
そうだ
いなくなってせいせいしたぜ…
でも何でだろうなァ
俺の中から、何かがなくなっちまったみてェだ…
空いた隙間がもどかしくてならねェ…
銀時とヅラに質問攻めになった俺は、機嫌が悪くなり腰を上げる。
居心地が悪くなったから、思い腰を上げて暗い歩道へと出た。
「…たまには散歩もいいもんだな…」
どっぷりと闇に浸かった通りを歩く。
普段表を歩けない俺達だから、真夜中になると一層ゴロツキ共で賑わう。
中には、馬鹿でけェ金額を懸けられた奴なんかも居たりする。
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