短編
□(高杉甘)サクラ色
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「晋助様!!名無しさん様から手紙が来てるっス!!」
甲板で月夜を見ていた高杉の元に来島が一通の手紙を片手に走り寄る。
「名無しさんからだと…」
来島からパッと手紙を取り上げると高杉は目で
“さがれ”
と云った。
数年前、鬼兵隊幹部として所属していた名無しさんは高杉の大切な人に当たる。
そんな名無しさんは現在鬼兵隊の本拠地である京を離れ、江戸で真撰組を演じている。
月一回ペースで、報告書を送る事になっていた。
高杉は何も云わず、薄いピンク色の封筒を開けて行く。
「報告書にしては早すぎねェか?……先週来たばっかだぜ…」
理屈と重ね合わせながら、不審な手紙に再び目を落とす。
すると、封筒の表に高杉の名前が記されていた。
高杉は暫しその綺麗な文字で綴ったそれさえも、愛しそうに眺める。
「…ハッ…名無しさんの奴バカか…俺に捕まって欲しいのかよ」
そう吐き捨てて、止まっていた手を再び動かし始める。
中に入っていたのは、白い便箋一枚だけ。
高杉は益々不審に思い、目を細めた。
本当に名無しさんからの報告書なのかと、名無しさんの名前を探すが、それはどこにも記されていなかった。
高杉はその便箋をゆっくり開いて行った。
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