3色フレーバー
□葡萄の糖度イコール、
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「お待たせしました」
ラクスは今、浴衣に身を包んでいた。
ステラの話からずっと気になっていたキラは、放課後彼女を誘った。
最初は驚いていたラクスだったが、すぐに嬉しそうに頷いてくれた。
そしてキラの希望で浴衣着用も決定し、ドキドキしながら御披露目したのである。
「似合ってます、か?」
この涼しげな水色の浴衣は数年前に2人で選んだものだ。髪をアップにしたラクス。
いつもと違う雰囲気にキラの心拍数は一気に上昇する。
「よく似合ってる。可愛いよ」
「ありがとうございます…」
まるで付き合い始めたばかりのカップルのように、ゆでだこになるキラとラクスであった。
カラカラとラクスの下駄の音を響かせながら、やって来た花火大会の会場の河原。普段のこの時間は、とても暗くて静か。しかし今夜はたくさんの出店が並び、明るく賑やかな声がひしめき合っていた。
「キラ、キラ」
「ん?」
その出店の端の店にラクスは興味を示す。あまり明かりの強い場所には近付かないようにしようと話していたが、少しぐらいならと彼女に手を引かれるまま歩み寄る。
「りんごアメ?」
そこには透明のアメにコーティングされたフルーツが光り輝いていた。
「おねだりしても構いませんか…?」
小首傾げの上目遣い。
これが狙ってやってないから、余計たちが悪い。
キラは苦笑しながら、頷いた。
「もちろん。どれにする?」
「この子たちがいいですわ」
ラクスが指差したのは定番のりんごアメではなく、ぶどうだった。3つ重なりあったそれは、団子のようで可愛いが、りんごよりは地味である。
「ぶどうでいいの?」
「ええ」
おじさんからアメを受け取ったラクスはとても嬉しそうに微笑んでいる。彼女が喜んでいるなら、とキラはお金を払い花火の見える場所に移動した。