3色フレーバー
□葡萄の糖度イコール、
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「センセーッ!」
「うわぁ!?」
キラが廊下を歩いていると突然背中にタックル、そして抱き付かれた。腹に回された腕は白く華奢。
見慣れた恋人と一致するが彼女が学校でこんな事する筈がない。
と、すると――…。
「ステラぁ?また君は…。危ないから、そんなことしちゃダメだって前も言ったよね?」
「ぅ〜、ごめんなさい。でも、でもね!ステラすっごぐ嬉しいことがあったから、先生に早く教えたかったの!」
反省の色なし。ステラは注意された事を一瞬で忘れ、極上の笑顔で喜びを表している。
彼女の長所は素直なところだ。警戒心の強い小動物の気質を持つステラ。こうやって自分には懐いてくれている事には感謝したい。
「で、何があったの?」
「あのね!先生は今日の花火大会行く?」
「え…。いや、そんな予定はない…かなぁ」
今夜は河原で大きな花火大会が開かれるのだ。すっかり忘れていたキラは頭を捻る。
そういえば数日前、花火大会のチラシをじっと見つめる彼女の姿があった事を思い出した。
自分達は教師同士。バレたら転任が確定する。だから隠して付き合い続け、人が集まる場所のデートは避けてきたのだ。
「ステラ、シンに誘われたの!だからルナやメイリンに浴衣着せて貰うの」
「そっか。楽しんでおいで」
無邪気な様子を見て、学生という身分が羨ましい。
キラは笑顔を絶やさないステラの蜂蜜色の髪を撫でた。
「うん!でも、キラ先生もね?ラクス先生、絶対ステラと一緒で嬉しいよっ」
「え!?ス、ステラ!?」
「あ、授業始まっちゃう。またね!」
タイミング良くチャイムが鳴り、ステラは自分の教室に帰ってしまった。まるで嵐が過ぎ去ったかのような静けさが廊下を包む。
「バレて、る…?」
彼女の言葉の真意は分からないまま、キラはトボトボと遅刻した教室に向かった。