人魚の記憶
□Royal.04 式典
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「はぁ〜…」
「どうなさいましたか?」
ここは、セリスの部屋。
そこでクレハに髪を梳かしてもらっていた。
「もう、式典とか嫌い!」
「まぁ、そう言わずに」
「だって〜…」
「今日の式典は、人魚様をお祈りする式典なんですから。王女様である貴方が出ないなんて事は、有り得ないですよ?」
「…お姫様の時は、サボっても大丈夫だったのになぁ」
「まぁまぁ」
髪を梳かしながら宥めるクレハ。
「いいじゃん、式典」
「カノン?」
カノンは正方形の薄い箱を持ってきながら言った。
「今日の式典には、これを」
パカッと箱を開け中を見せた。
そこには赤い石がついた煌びやかなチョーカーがしまわれていた。
「あ、それがお父さんが言ってた“人魚の涙”?」
「そっ」
「何か随分な小ささね」
「小さいから高価なんだよ、姫。まぁ形はだんだん変わってきているけどな」
「もー!姫、姫って…私は王女よ?姫じゃないの」
王女の自分より位がちょっと低い姫と呼ぶカノンに直すようにと命令。
「これは、申し訳ありません。セリス王女様」
「うん、よろしいわ」
「……──はい、出来上がりましたよ」
二人の召使いのお陰で、セリスは誰もが見惚れるように煌びやかに王女と呼ぶのに相応しい。
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