人魚の記憶
□Royal.05 運命
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「なぁ、アル。城ってこの先だろ?」
「うん、あってるから大丈夫だよ。」
「本当に今度こそ、お前の身体を取り戻せるといいな!」
「兄さんの身体もね!」
期待に満ちた少年達は、城を目指し街中を歩いていた。
ところが、ある店の前に人だかりが出来ていた。
「…ん?なんだ?」
「なんだろうね?」
兄弟は近くに行き、様子を見た。
男の声と女の声が聞こえた。
「金は払ってもらうぞ、お嬢ちゃん!」
「だから、私は悪くないしお金無いって言ってるでしょ?!」
エルリック兄弟も人をかき分け、覗いた。
そして、人々がこそこそ言う。
「あれ、例の店だよな」
「何かにつけて金払えって言ってね」
「あの子大丈夫かな…?」
「助けたいけど…“お前が変わりに金払え”って言われたらなぁ…」
どうやらその店は、有名な悪い店らしい。
「だから、わざとじゃないって言ってるじゃない!」
セリスは、ストールの裾に引っ掛けて商品を落とし、壊してしまったようだ。
「なら、それはお前さんが悪い。こんな街中でそんな長ったらしいものをひらひらさせてるから」
「はぁ?ストールは関係ないじゃないのよ!」
「往生際が悪いお嬢ちゃんだな!」
パンッ バチィィィィ─────…
「これでいいかい?」
「「え…」」
エドワードは店の人とセリスが言い合いをしていた横で、周りの野次馬に何があったかを聞いて錬金術で壊れた商品を直した。
「なっ…、坊主っ」
「なに?まだ何か足りない?」
「い…、いやぁ〜!ありがとうな、坊主!お嬢ちゃんも気今後をつけるんだぞ」
店の人は、ころっと機嫌が直り、直った物を抱え元の位置に戻った。
野次馬もぞろぞろと帰って行った。
その中、一人残ったセリス。
ぺたりと地面に座って助かった事に安心していた。
「──────おい、」
声をかけられ、顔を上げた。
その瞬間。
トクンッ…
「大丈夫か?」
運命の歯車が─────、
「……ぁ」
トクンッ…
動き出した。
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