REBORN!

□他人の身体を笑うのは止めましょう!
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人間というものは、人種が違えば髪の色も、目の色も異なる。
勿論、同じ人種だって人それぞれなのだが。


オレは、この歳まで自分は根っからの日本人だと思っていた。けれども、ずっとずっと昔に遡れば、どうやら欧州の血が混ざっているらしい。
それでもオレは日本人だし、両親も日本人だし、両祖父母だってそうだ。

つまり、オレの瞳、髪の色素が薄いのは人種とかじゃなくて、日本人という括りの中の、個人差だと思うのだ。





「ぷーックックックッ…っ」


それは、最早抑えが利く類の笑いではなかった。

腹の底から、後から後から込み上げてくる可笑しさに、抗う術など有りはしない。
震える肩は止まらない。湧き出る涙も留まらない。


「…てめえ、あと3秒以内に黙らなかったら消すぞ」


地を這うような、否、地中深く眠るマグマの様なドスの利いたリボーンの声。あとちょっとでもからかったら、大噴火に間違いない。


「…ッッッ!」

「…2…1…」

「た、タンマタンマ!!」


文字通り噴火寸前の様子で時限爆弾のカウントダウンをする、薄い唇を手の平で覆った。
いつもならここで、そのまま手の平ごとベロリと舐めてからかったりするだろう。

しかし、そんな様子もなくジト目で此方を睨むということは、つまり相当に怒っているということだ。



「ご、ごめん、だってそれ…っぷ、ハハハハハ…っわ、いってぇえ!!!」


駄目だ。
見ないように、気にしないようにすればするほど、余計に気になってしまう。
だって、こんなの予想外過ぎる。

数分前まで憤死しそうなくらい緊張していたのに、まさかこんなオチだなんて。



「…綱吉」

「…ふククッ…ぇ、え?」


「先生は悲しいです。そこに正座しなさい」



どうやら先生は相当におキレになってるようだった。









話を遡るのは、ものの数分前だ。
今日はオレにとって記念すべき日になるはずだった。

それはつまり、初体験。
何のって、お互い真っ裸のこの状況で、そんなの愚問だよね。


「てめえ…人のこと笑える立場かよ」


リボーンは絵に描いたような男だと思う。
造り物めいた容姿もそうだが、典型的フェミニスト、正統派ヒットマン、天上天下唯我独尊の代名詞。存在が極端、というか、彼は完璧主義を地で行く。

つまり、何もかも完璧な彼にとって、こんなチンチクリンの日本人など、取るに足らない存在なんだと思う。


「だ、だってオレはさ、ダメツナだし」


頭から爪の先まで完璧な奴。
そんな彼に鍛え抜かれて、ついにオレは異国の地を踏んだ。
つい、数日前の話だった。
リボーンはオレの最愛でもある。男同士とかもう関係ない位に、オレはこのMr. Perfectに囚われてしまったのだ。

そんなオレたちの、記念日たる今日。初めての、裸の、付き合い。



つまりは、『一緒にお風呂に入って絆を深めよう』大作戦だ。



「開き直ってんじゃねえ」


付き合いだしてからもう直ぐ半年が経つ。
そんな、他愛ない日の夕暮れ。初めて彼の前で素肌を曝す覚悟をした。

誘ったのはオレ。
未だに子供の戯れの様な甘ったるいキスしかくれないリボーンへの、挑発のつもりだった。
それが、まさかこんなことになるなんて…。



「でもさ?可ぁ愛いよ、…ククッ…」

「…潰すぞ」


日本にいる間、彼が赤ん坊でいた何年かの期間も、一緒に入浴なんて一度もなかった。それどころか、着替えている素振りさえ見たことがない。いつ間のまにかパジャマへ、スーツへ、コスプレ衣装へ。その早業と言ったら、ジャ●ーズも真っ青な早着替えなのだ。

確か皆で豪華客船に乗ったとき、ルネッサンスなんて意味不明なコスプレ(衣装はなんと葉っぱ一枚)を披露してくれたこともあった。

その時と、後はギャグみあいな天使姿だけではないか、リボーンの肌をまともに目にしたのは。




「ちょ、怖い怖いっ!」



普段は一人きりで使うスペースに二人。馬鹿デカイ洗面台に自らを映さないよう、端っこで、ゆっくりとも素早くともつかないペースで服を脱いだ。
ゆっくりだと意識しているのが丸分かり。かといって不自然に早いと、ガッついてるみたいで嫌だった。
『あっち向いていて』
と、何度も喉まで出掛けては閉じ込める羞恥を隠して、見ているわけでも逸らしているわけでもない、曖昧な地点に視線を置いて。
リボーンの衣服が擦れる音に合わせ、大体同じタイミングで脱ぎ終わりたかった。


「てめえだって、18にもなって毛も生え揃ってねえ餓鬼のくせに」

「…!な、なななっ、」








心臓が胸を突き破ってしまいそうなほどの。足が竦んで座り込んでしまいそうなほどの緊張感に、押しつぶされそうな時。

『こっち向け、ツナ』

まるで催眠術にかかったように、足が動いた。甘やかす声に足が騙される。
気が付いた時には、自分と同じ格好をしたリボーンにその身体を全部曝していた。今まで知らなかった、『男』がそこに立っている。
急速にこみ上げる熱。リボーンの向こう側には、鏡に映った自らの痩躯。
目当てられない格差と、紅白に別れていく肌に、目眩がした。

そんな、記念すべき日。







「そんな、生えてんだか生えてないんだか分からない奴に笑われたかねえぞ」

「いや、でもさ…それ、っっ」

「何だ、文句あんのか」



他人のそれをマジマジ見ることほど無粋なことはない。…というか、そんなこと恥ずかし過ぎて出来ないのが正しい。
でも、明らかに目線を逸らすというのも気まずい。それに、気のせいでなければリボーン自身、オレのを凝視しているような気がするのだ。いや待て、むしろ確実にしている。

一緒に風呂に入るのだ、これくらいのことで動揺していてどうする。
そう言い聞かせて、自らを奮い立たせた。

リボーンのアソコなんて怖いもんか!!まさか、エイリアンみたいなのがくっ付いているわけでもあるまいし!


“意を決する”
という表現よろしく、オレはこのデカイと評判の目ん玉を、飛び出るほどにかっ開いてリボーンの下半身にギョロリと視点を合わせたのだった。





それからの数分は、リボーンの怒声と、あとはひたすらオレの笑い声だった。









「いやぁ、さ、もっとね、…その…え、エグイ想像をしていたわけで、」

「エグイって何だ。このスケベ!エロ!変態!」

「いやいや、それお前にだけは言われたくないよ!」



彼氏の下半身をみた第一声が『何それ有り得ないアハハハハ』だったのは謝ろう。
だけど仕方ないじゃないか。
だってだって、リボーンのったら、


「チャームポイントだ」

「ね、ちょっとさ、伸ばしてみてもいいかな…、」



クルんクルんだ。








さっきまでの初々しい反応はどこへやら。
綱吉は完全にリボーンの下の毛に心を奪われていた。その、アーティスティックなまでの見事なカールに。



「ツナ、…あんまり引っ張らないで貰えるか?」

「え?何で?…だってこれ楽しっ!ぷぅ…クククッ」






それからというもの、綱吉はリボーンの裸体に抵抗がなくなり、共に入浴しては陰毛を弄るというのが習慣になったという。

しかしながら、関係を作る前に裸体慣れしてしまったがために、いざ合体!という雰囲気に持ち込むまでには、実に数ヶ月の生殺し生活を強いられたのだと、後にリボーンは語った。













『ぶっハハハハッ、ほんっと素敵だよ!そのクルンとした淫毛!!!』









fin...

 

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