REBORN!

□時空旅行U
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「ふふ、リボーンてこんな小さかったんだね」



父親の服を引きずるように纏ったそいつは、俺を抱き上げてそんなことを抜かしてクスクスと笑う。

自分の知るものより明るくなった髪色、柔らかい物腰や洗練された仕草からこの男が過ごしてきた年月が伺えるようだ。
加えてこれから自分がとるべき道、手段を再認識できた。これが俺の手掛けた仕事か…。



日曜だからといってこの俺が手を抜くわけもなく、むしろ休日こそ普段の遅れを取り戻す好機だと、不出来な生徒を脅しつつ机に縛り付けていた。涙目でヒィヒィ言いつつも容赦されないことを身を以て知っているツナは、おとなしく従っていたのだが・・・



「…まさかあんなことになるとはな」

「ん?なぁに、リボーン」


上機嫌に聞いてくる綱吉の声は、聞き馴れたそれよりも若干低い。


「…何でもねぇぞ」

「そ?」


大して気にした風もなく返ってきた応えに、小さくため息を吐いた。綱吉は目の前の赤子の頭を撫でるのに夢中なのだ。
急に持ち上げられたと思ったら、胡坐をかいた上に後ろから抱っこされ、尚且つ人の髪を掻き回すように撫で擦っている。


「てめぇ…昼間っからナニしてんだ、ボスのくせに」

「うっ、だからそれはごめんってば。久々に会って抑え効かなくてさ」

「ふんっ。俺はそんなふしだらな野郎に育てた覚えはないがな」


不機嫌に呟きながらも、綱吉に良いように撫で繰り回されるのが少し、ほんの少し気持ち良くて拒否できずにいる。
実に面白くない。


「そんなこと言われても、これは紛れもなくリボーンの教育の果てなんだけど」

「開き直るんじゃねぇ」




──まったく…なんなんだ。


アホ牛のバズーカなんぞに当たって(トロくせぇからそうなるんだ)入れ替わったと思えばあんな…。咄嗟に牛を追い出したからいいものの、いかにも『最中でした』という登場に開いた口が塞がらなかった。


「そんな怒るなよー」

「っせえ!」



──自業自得だ!昼間っから盛りやがって。

現れた綱吉は何と全裸で、その白く肌理の細かい肌には無数の鬱血の跡が生々しく刻まれており、一目で何をしていたかを悟った。
本当に事が終わった直後なのか、呼吸は絶え絶えで顔は涙だか涎だかでぐちゃぐちゃになっており、何より問題だったのが、受身側だった名残で大股開けて誰かを受け入れる態勢のままだったことだ。

呆然と見つめるリボーンを見てようやく状況を把握した綱吉が『ギャ───ッ』と色気のない叫びを上げて両手で股間を隠したとしても、明らかに時既に遅しだ。




「はぁ─…。お前が入れ替わって5分はとっくに過ぎていることはさておき…」

「あ、そういえば…」

「俺は悲しいぞ、ツナ」

「うん?」

「世界最強のヒットマンであるこの俺様が、苦労に苦労を重ねて手塩にかけて育てたはずの生徒が」




TPOを完全無視で仕事を放棄して男とヤッてるなんて…。


さも嘆かわしげにうなだれて見せた。軽くトラウマになりそうなくらい、ショックだ。どこの馬の骨だ、今から10年後に乗り込んでブッ殺してやろうか。
リボーンがそんな物騒な計画を描く後ろで綱吉は、愛しげに目を細める。



「大事な恋人なんだもん、許してよ。すっごく愛してるからさ、歯止めなんて効かないし」

「‥‥」


イライラともムカムカともつかない感情が腹の底で蠢いている。優しく囁くように『恋人』を語る声色で、綱吉がそいつに本気であることといかに大切に思っていることが嫌でも伝わってきた。


──クソ。嬉しそうにしやがって




「知りたくないの?」

「…別にいらねーぞ」


話の流れで綱吉の言わんとすることに察しがつき、ますます楽しそうな声を素っ気なく切り捨てた。
自分の知らないことがあるのには耐えがたいが、二つ返事でがっつくのはプライドが許せないのだ。


「凄くカッコ良くて、凄く強い。それに凄く優しくてだれより笑顔が綺麗な、…可愛い人だよ」


僅かに頬を染めて、ニコリと笑みを浮かべた綱吉に呆れた。
それと同時に、誰より綺麗だと思った。綱吉の言う『その人』よりもこの笑顔の方が綺麗だと断言できる。こいつにこんな笑顔にさせる奴、やはり殺っておくべきか。


「惚気なら他当たれ」


あは、バレた?と悪戯に笑う表情は可愛い、と思った。
相変わらずクスクスと楽しそうに笑う綱吉に気付かれぬよう、また一つ小さくため息を吐くと、不意に笑う振動が消えて静寂が訪れた。











「リボーンだよ」



暫くの沈黙を経て、綱吉は唐突に呟いた。
何のことかと「は?」と振り返ろうとしたが、急に抱き締める腕の強さが増して叶わなかった。ぎゅ、と力が籠められて密着した背中に、綱吉の体温と鼓動が伝わってくる。

──早ぇ…




「俺の大事なリボーン…。俺の心はずいぶん前からリボーン、お前に奪われたままだよ。それなのに…お前以外にいったい誰を愛せるって言うの?」




「‥‥バカツナ」

「ん?耳赤いけど?」


「気のせいだ」


「嘘。ほっとしてるくせに…」





うるせえ…、

そう呟いたはずの声は、擦れて音にならなかった。
不覚にも胸が熱くなってしまった。
生意気に口説き文句なんて吐きやがって。つまりあれだ、こいつも立派なイタリア男だってことだ。

──クソ、顔あちぃ…










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