REBORN!

□君のとなり僕のとなり
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人間一つくらいは人の役に立つのねー。あんたと同じクラスで良かった!







何だか毎日そんな皮肉めいたことを言われている気がするが、耳に慣れすぎて今さら何とも思わない。

クラスの女子によると学年、いや学校一のイケメン君と仲が良いことが俺の唯一の長所らしいのだ。悪かったね、どうせ俺は勉強ダメ運動ダメのダメツナだよ。
俺だって、家が隣同士じゃなきゃこんな頭良くて顔も良くてスタイルまで抜群な優等生とツルんでるわけないってことくらい分かってるっつーの。
何だか褒め称えているみたいだけど、俺に言わせればこいつは破滅的に性格が悪い。


「じゃあなダメツナ、寝呆けた面してるからって居眠りすんなよ」

「…わかってるよ」


嫌味をふんだんに組み込んで軽く別れを告げたリボーンが入り口へ向き直ると、今まで遠巻きに見ていた女の子達がきゃあ!と一気に色めき立った。
別にいいんだけどね、毎回毎回よく飽きないよね。

リボーンの教室は特進クラスで俺とは廊下の反対側にあり、同じ階ではあるが端から端まではそれなりに距離がある。それなのにこいつときたら、休み時間毎に俺のところに通ってくるからたまったもんじゃない。
人のクラスの移動教室まで把握して一々ちょっかいを出しにくるなんて、どれだけ暇なんだ。

リボーンが去った後の騒ついた教室で綱吉は一人ため息を吐いた。きゃあきゃあ言う女子にご丁寧にも笑い掛けたりするから手に負えないのだが、リボーンもリボーンなら女子も女子だ。
リボーンの訪問なんて珍しくもないんだから、いい加減慣れればいいのに。ばか騒ぎしちゃって何を期待しているんだ……って胸張って言えたらいいのに。

リボーンは俺に会いにきてるのに!








「さわだー!さーわーだー!!」

「…ん……ひゃい?」


窓際の特等席で気持ち良く寝ていたら、突然耳元で名前を呼ばれた。無視するわけにもいかず顔を上げて、眠い目を凝らす。あ、授業終わったんだ。
ボーッとしながら声のした方を見ると、入学時から俺と成績最下位を争っている女の子がこちらを睨んでいた。
何か嫌な予感。


「昼休み。面貸しなよ」


やっぱり。
これで何度目になるんだろう。いったいこの人は、何回同じ説明をしたら解ってくれるのか。
リボーンにお昼一緒に食べれないって言わなきゃ。あーあ、また怒られるよ…。

憂鬱になりながらも了解すると、廊下がだんだん騒がしくなってくる。来たか…と顔をしかめた瞬間、今まですごい形相でこちらを見ていたその子が満面の笑顔で振り返る様を見てしまった。

…女の子って怖い。




「あ"ぁ?またかよ。てめえこれで何度目だ」

「ごめんて;」


案の定機嫌が急降下したリボーンを何とか宥めるが、さすがにこうも頻繁だと申し訳ない。
彼女に呼び出された理由が解っているだけに本当のことは言えず、先生に呼び出されたと言い訳するのだが、さすがに連日それでは気付かれかねない。

ふと件の彼女を見ると、やはりと言うかこちらを凄い形相で見ていた。俺限定で。リボーンが見ていないとすぐこれだ。


「…マックな」


怪しまれていないかハラハラしながらリボーンを見上げると、不機嫌さを隠さずぶっきらぼうにそう呟いて教室から出ていってしまった。
100円マックなんて可愛いものはあいつの辞書にない。連日の呼び出しで、俺の財布には夏なのに北風が吹いている。









「だから、リボーンとは幼なじみってだけで!別に何かしたわけじゃないんだってば」


いつもの所でいつもの話。体育館裏は告白のための場所なんじゃないのか。

別に彼女に何の恨みもないけれど、ついつい口調が冷たくなってしまうのが自分でも嫌だった。
何度同じ説明をしたのか、考えるだけで頭痛がする。


「嘘吐いても無駄よ!これ以上リボーン君を陥れるつもりなら、本っ気で許さないから」


陥れるって何のこと…。
何で俺がリボーンと仲良くなるために催眠術掛けたり脅したり身体売ったり薬盛ったりetc.しなきゃいけないんだよ。
そんなに俺とリボーンが友達だとおかしいのか?幼なじみで昔からこうなんだから仕方がない、不可抗力じゃないか。

彼女の理不尽な物言いにだんだん悲しくなってくる。これでは自分自身を全否定されているのと同じことだ。


「ねえ、お願いだってば。私もリボーン君に近付きたいの、だから教えて!」

「悪いけど、俺には教えられることなんて何もないよ」


リボーンと仲が良いことを利用されるのは嫌だが、仲が良いこと自体が策略の賜物だと思われるのはいっそう耐えがたい。
これ以上話してもきりがないと振り返った、その時だった。








「り、リボーン君…」


そこには、この場にいるはずのない奴が立っていた。
驚きで声が出ない俺の後ろで、やはり驚いたような声がしたと思ったら、続いて焦ったように走り去る音が意識の遠くで聞こえた。

ヤバい。ヤバいヤバい、頭の中がその言葉で一杯になって、サーッと顔から血の気が引いていく。
先生に呼び出されたと言って昼飯を断ったはずの幼なじみが、クラスの女子と体育館裏で二人きり。まずい。何がって…何がって…とにかく全部がまずい。


「ちがっ、これは…そのっ、……待って、リボーン!」


とにかく何か言わなくてはと口を開くも弁解のしようもなく、何も言わないリボーンはまるで興味ないとばかりに踵を返した。
呼び止めてはみたものの、歩みを止めないリボーンをそれ以上追いかけることもできない。

一人残された体育館裏に、妙に白々しく予鈴が響いた。














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