REBORN!
□Love, all of you
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『ね、デートしようっ』
それはこんな一言からはじまった、ある休日の話。
目を覚ました時にリボーンが隣にいた朝は一日気分がいい。ちょっとくらい疲れていたって、慢性的な腰痛で動けなくたってこれには勝てないんだ。
「…またお得意のオモイツキか」
ため息が耳に痛い。何だよ…そんな言い方ってないよね。まあ確かにリボーン見てて突然閃いたわけだから紛れもない思い付きなんだけどさ。
え、もしかして他に予定でもあんのかな。……愛人さんと約束…とか。だったら嫌だな、せっかく奇跡的に休み被ったのに。あーぁ、1ヶ月も前から密かにチェックしてたのにさ。
「…愛人作って欲しいのか」
あれれ─…怒らせちゃった。こっち見んなよこえーから。
てかリボーンが人の心読むのが悪いんじゃん。それで勝手に怒るなんて迷わ…イテテテテテもげる!鼻もげるぅ…
「もげるかアホ。精々そのペチャンコ鼻が人並みになるくれーだ」
「…ひどっ」
最近リボーンに愛人の話を振るとマジで機嫌が悪くなるんだよね。俺のために終らせてくれたのは嬉しいけどさ、それとは別に不安は不安なんだよ。
だってさ、格好イイもん此奴。
ああ─…切実に鼻離してくれないかな…。なんか痛いのかどうかも分からなくなってきちゃったよ。ヤバくないか?
「ふんっ、格好良い俺様に免じて許してやるか」
「じぶんでっぶふぁっ!」
「ああん?」
「自分で言うなっ!!」
自覚のある美形ほど質の悪いものはないよ。うわ─…何だよその笑顔。ずりぃよもう馬鹿っ!
何だか良いようにされているようで悔しい。でもやっぱりこうして二人でゆっくり過ごす朝は特別だから。
ベッドヘッドにもたれていたリボーンをシーツの中に引きずり込んだ。薄い布越しに差し込む朝日がキラキラと纏わり付いて綺麗だった。
「あのね、いつもとちょっと違うデートなんだ」
リボーンに見とれてて肝心なこと忘れてたよ。むしろ危うく流されるとこだったし。だってあの笑顔は凶器だよ、息できなくて死ぬかと思った。
「いつもと言う程してないがな」
「…寂しいこと言うなよな」
この前のデートどたキャンしたの根に持ってるな!その前とその前のもずっと根に持ってんだろ!!……そうだよ。オレたちあまりデートらしいデートってしてこなかったよな。最後のいつだったんだろ…。
隼人に相談して休暇もらおうかな。旅行とかさ、きっと何処で何しても楽しくなるんだろうな。
「で?何がちょっと違うんだ」
「ん…とね「ツナが女装して野外プ「えっとねぇ!!」
馬鹿だろ此奴。そろそろ三十路が見えてきた野郎に一体何させようとしてんだよ変態め。
知らないぞ。今のは完璧オレ悪くないもん!そんな睨まれたって怖くなんて……ヒッ!?
「…も、もっと普通だよ。私服のデート…とか」
「………」
そう、私服デートなんだよオレがしたいのは。
ご存知の通りリボーンていっつもこの格好なんだ。そう、特注のブラックスーツ。知ってた?まだ赤ん坊の頃からずっと専属の職人さんがいるらしいよ。
しかもこれがまた嫌味なくらい格好良く着こなしちゃってるわけだけど、長年一緒にいるオレでも俗に言う「私服姿」って見たことがなくて。
仕事の時は勿論、休みの日に出かける時もちょっとした用足しも。ドレスコードのあるパーティだってブラックだし。まあ、それも馬鹿高い一級品なわけだけど。
だって聞いて!リボーンたら部屋着もパジャマもないんだよ。基本スーツ脱がないし寝るときは……。お、オレもね、何か着てよとは言ってるんだよ?だってこっちが困るじゃん、目のやり場とか……ってちょっと話ズレてきちゃったな。
それより、
「ごめんその前に……持ってるよぶっ!!…何すんだっ!」
人が喋ってるときに顔面に枕押し付けるなんて何事か!
「失礼だぞ」
「だってお前いっつもスーツだし」
「こっちのが楽だからそうしてるだけだ」
は?スーツの方が楽なんて羨ましい奴だな。オレなんて肩が凝ってしょうがないよ。リボーンてアレだ、スーツも身体の一部なんだきっと!
「じゃあさ…Tシャツに短パンとか持ってるの?」
「当たり前だろ馬鹿にしてんのか?まあ…短パンはだらしねえから履かねえな」
え。オレめっちゃ履いてるんですけど!むしろ楽チンだしお気に入りのはひたすらヘビロテするし。
だらしないか。そっか、そうだよな。そろそろ身だしなみも考え直さなきゃ…
「お前はいい。好都合だ」
「…何がだ」
「言葉のまんまだぞ」
どうせまたろくでもないこと考えてんだろうよ。もう止めよ、今日から止めよ短パン履くの。
「つうわけで私服で広場の時計塔に1時ね!」
「一緒に行きゃいいだろ」
「ダメ!待ち合わせするのがいいんじゃん」
「チッ…面倒なとこばっか拘りやがって」
舌打ちされたってため息されたっていいよ。だって気になるもんは気になるし特別なデートしたいもん!
多分ね、この超絶美形のリボーンのことだしダサいって可能性はないんだよ。抜け目ない奴だし。
要は好奇心の問題だ。センスっていうか趣味っていうか……ああ!もうわかったよ。正直に言います、リボーンの色んな姿を見てみたいだけですっ!!
「ぷっ…ククッ…」
「、何笑ってんだよ。じゃ、ほら急いで支度しよ。はい出てった出てった!!」
ベッドから出ようとしないリボーンを無理矢理部屋から追い出した。
普段は他人にも自分にも厳しい奴だけど、何だかんだ世話焼きで我が儘も聞いてくれる。それにあれで結構優しいとこもあるんだよ、皆は知らないかも知れないけどさ。
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