REBORN!

□時空旅行T
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「ねぇ、俺ってやっぱマファになっちゃうんだ…」



所変わってまたもやだだっ広い部屋。応接室と言うより談話室に近いのだが、なにぶん豪華すぎて判断に困る。
座り心地の良いソファーで、なぜかまったり茶をすする俺。絶賛未来旅行中!


「しつけーぞ。さっきからそう言ってんだろ」


向かいのソファーでエスプレッソ片手にふんぞり返る美少年。態度はデカいが、考えてみれば実際は今の俺より2つは下のはずだ。


「はい10代目、貴方様はご立派にお勤めになられてます」


勧めてもソファーには座らず、傍らに立ったままの10年後の獄寺は、自分の知る彼より随分落ち着きのある男の様だ。‥‥そう、先程まで泣きながら俺を崇め奉っていたのが嘘みたいに…。


「他の皆は?その…守護者とか」

「あのなー、未来の情報を無闇に知ろうとすんな」


まあ、それもごもっともだ。だけど気になるもんは気になるし。


「ご安心を!俺は10代目の右腕として、こうして傍に使えてますから!」

「う…うん、アリガト」


10年経っても勢い衰えることなく、寧ろ熱くなっている獄寺に若干引き気味にも笑顔を向ける。


「山本は中国。了平は空の上。骸はクロームと本部の第一研究室。牛は死んだ。雲雀は同盟へ視察回り」

「へぇ…雲雀さんまで‥‥って;バラしてんじゃねーか!!しかもどさくさに紛れてランボ殺すな!」



あ、舌打ちしやがった。



「ハルは…」
「え、ハルも来てんの?」

「ああ、ボンゴレきっての有能情報工作員だ」


「…へぇ;」



マフィアなんかちっともなりたくないけど、未来の自分の周りには変わらず皆がいるという。その事実が、素直に嬉しいと思う。



「‥‥‥‥俺は‥?」




俺はどうなのか。
世界を股に掛けているらしい仲間たち。10年前とは違う、獄寺。大人びてますます追い付けない家庭教師。

未来の俺は、どんな顔して皆の隣に立っている?


「俺は、ここにいてもいいのかな…」



───俺はたった10年で、皆に釣り合う人間になれるのかな、






「…いいもなにも、貴方にいてもらわなくては困ります!」


未来の右腕は、聞き慣れたそれよりいくらか低くなった声で、はっきりと言い切った。

君は、いつの間にそんな風に笑うようになったの?



「貴方は年を負うごとに威厳も増して、ボスらしくなられた。それでも貴方の優しさや真っ直ぐさは10年経ってもなんら変わっていない。」

───そんな貴方だから俺たちはどこまでも付いていくんですよ。俺たちには貴方か必要なんです。


ゆっくりと諭すような声色で獄寺は、ふわりと綺麗に微笑んで見せた。



「…そっか。ありがとう」

「いえ、では…俺は執務に戻ります。10代目もリボーンさんもごゆっくり、」



そう断って一礼し、律儀にドアの前でも一礼をして、獄寺は部屋を後にした。



「──リボーン、」

「何だ」



「未来の俺って幸せ者だよね」

「当たり前だ。この俺が傍にいるんだ」



はは、何それ!
軽く笑い飛ばすつもりが、リボーンの見たこともない穏やかな視線に、それも叶わなくなってしまった。

──ズルいよ、そんな目するなんて…。



「リボーンはさ、俺といて幸せ?」

「ああ」

「…そっか、///」


初めて意識した。リボーンを、好きだと思った。



「お前はどうなんだ?10年前は幸せか?」



分からない。幸せとか、今まで意識したことなどなかったから。
でも今日、未来の皆を垣間見て、10年後の自分を知って、羨ましくなった。当たり前だがここには、過去から来た自分に居場所はないのだ。
でもそれと同じくらい、自分のいるべき過去が、掛け替えのない大事な場所だと思えた。なんでもない日常の大切さ、隣の温もり。



「幸せ…かな?」


そんな意識の変化が恥ずかしくて、わざとほのめかしたけれど。察しの好いリボーンのことだ、そんな照れ隠しも全てお見通しなのだろう。



「あーあ!俺も好きな人とイチャイチャしたいなぁ」



こっちに飛ばされたときに見たリボーンは、情事の直後でそれはそれは艶やかだった。あんな目でこいつは、俺を見るようになるのか‥‥。思い出しただけで顔が赤くなる。


───未来の自分に嫉妬するなんて、

未だ未来の自分を一体化できないまま、赤の他人のように思える。ライバルに、自分の宝物を盗られた気分だ。




「妬くな、」



ふっと小さく笑って、額に柔らかく口付けさる。
胸が、いっぱいになる。いっぱいになってどんどん溢れて、…苦しい。



「俺…リボーンが好きだ」

「ああ、俺も愛してるぞ」


違うよ、お前が愛してるのは俺じゃない。10年後の俺は、今この瞬間の俺じゃない。



「今から10年くらい前のある日、あいつは俺以外の誰かを好きになった…」

「え、?」








生徒を特別な目で見ていることが、自分でも信じられなかった。日に日に強くなる想いは、見過ごすにはあまりにも大きくなりすぎていた。
赤ん坊の手では、あいつに届かない。


俺はこの呪いを呪った。


気持ちを伝えられないまま時間だけが過ぎていくなかで、ある日あいつは言ったんだ。


『リボーンが好きだよ』



でもあいつは俺を見ていなかった。あいつは俺と、未来で見た俺を重ねていたんだ。





「お前は昔も馬鹿だった。俺がどれだけ苦労して、お前を振り向かせたと思ってやがる…」






「…お互い様なんだ?」









───ああ、お互い様だ。







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