REBORN!

□君のとなり僕のとなり
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今まで経験してきたどんなキスより夢中になり、今までしてきた恋がままごとだったのだと言い切れるくらい、遥かに苦しい。
振り回されているのは俺の方だということを、お前はちっとも気付きもしない。











キスしたかったというのは決して嘘ではないけれど、牽制しておきたいと思ったのが一連の行為の始まりだった。
少しでいい、見せ付けられればそれで良かったのに、触れたそれの感触に不覚にも理性を奪われてしまった。もっと確かめたくて、もっと深く感じたくて、気付いたら唖然とするツナを置き去りにしたまま妙に甘ったるい唇を堪能していた。



「それに、知りたがってたから教えたまでだろ」

「だからっ!」


らしくなく感情を荒げる綱吉はまるで分かっていないのだ。あのキスだって、本当の意味で翻弄されたのはこちらの方だというのに。

知らず嘆かわしく思った感情が表情に出てしまったのか、それを目ざとく見付けた綱吉はさらに勘違いをして苛立ちを募らせている。

その鈍感振りにこちらが憤慨して見せたら、どんな反応が返ってくるだろうか。



「じゃあ、お前はなぜ抵抗しなかったんだ」

「び、びっくりして、それどころじゃなかったんだよ!」


叫ぶように言いながらも先ほどのそれを思い出したのか、綱吉の顔はみるみるうちに顔が赤くなっていく。
その反応があまりにも可愛くて、その細っこい腕を取って引き寄せ、先ほどの行為を辿るように口付けた。癖になりそうなほど柔らかい唇は手放しがたく、ついキスの終わりを延ばし続けて、ツナが縋り付いてきても離せないくらいに夢中にさせられた。


「…ん、……っふ、」


力の抜けた身体を支えて、同じ質問をぶつける。


「どうして抵抗しねえんだよ」


大きな目に今にも零れそうなくらいに涙を蓄めて、どこか遠くでも見ているように力なく見上げてくる。その目で見つめられるのはこれで二度目なのに、全くもって耐性が効かなかった。
キスの名残で惚けた表情の中には、露になっていた怒りはなりを潜めている。



「好きだからキスしたかった」

「……っ?」


「お前に惚れた理由を聞かれたから答えた」

「…は、…?」


「それだけだ」






謝らねえぞ。言いたいことは言ったとばかりにふんぞり返ったリボーンは、例によって腰を抜かした俺を真上から見下ろしている。

偉そうな態度で分かりにくいけれど、これはいわゆる告白…?というやつなのではなかろうか。
放課後の屋上で二人きり。昼休みの体育館裏に勝るとも劣らないベタなシチュエーションで。それはまさしく、愛の告白だった。



「…勝手なやつ!」


好きといわれて人知れず跳ねた心臓は気付かなかったことにしよう。
さんざん振り回しておいて勝手なことを言うリボーンに苛ついているのは確かなのだから。だって好きだなんて、そんなこと。言われ慣れてないからこんなにドキドキする、そうに違いない。
顔に火が灯る、きっとそれだってリボーンにムカついてるからなんだ。


「それは今さらだろ」


しれっと言って笑った顔は、昔から見慣れているはずなのに。なぜか無性に胸がざわついて、必死に繕った平常心がぐらりと揺れる。


「確かに勝手かもな。でもあんなんじゃ足りねえんだよ」

「…なに言って、」


真剣な表情で真っすぐに見据えられて、思わず息を飲んだ。
友達だ。俺とリボーンは幼なじみで、友達なんだ。それなのにどうして好きだなんて言うんだ。どうして、こんなにドキドキするんだ。
考え過ぎて、分からないことが多すぎて頭痛がする。



「好きだ」



ふぅん、そっか。と軽く流して無かったことにできたら良かったのに。
だってお前はいつも俺を馬鹿にして笑うではないか。ダメツナと呼んだのだってお前が最初で、休み時間の度にわざわざからかいに来たりして。


「綱吉、」


やめてくれ。いつものようにダメツナでいいから、だからそんな甘ったるい声で名前を呼ぶなよ。


「…やめろよ、わかったから、もう…」

「止めない」


はっきりと告げられた言葉。真剣な眼差しが、揺れる心に突き刺さった。
もうだめかもしれない。そう悟らざるを得ない、焼け付くくらいに熱い眼差しが。


「止めない。だから嫌なら抗え。お前の意志で、お前が選べ」




選べ。そう言ったくせに、選択肢などあって無いようなものだった。
頬に大きな手が添えられて、まるでいとおしむようにゆっくりと撫でられる。一瞬も逸らされることない情熱的な眼差しが、頑なに凝り固まった心をみるみる溶かした。

優しく細められた闇色が近付く。今日で何度目になるか、ふとそんなことが脳裏を過る。教室で、皆の見ている前で初めてキスをした。屋上で、二人きりで二度目のキスをした。
気持ちごと奪われて身体の力が抜けるほどに、リボーンでいっぱいになった。リボーンが言う通り、俺は確かに抵抗しなかったのだ。




距離が0になり唇が触れる瞬間、俺の真意を伺うような眼差しが見えた気がした。

俺は選んだ。
選んで、そのキスを受け入れたのだ。



















fin...?

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