ラッキー★ドッグ

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前を歩いているのは、幹部の中で唯一面識のある奴だった。
昼飯時なので、回りに人は見当たらない。
少しくらいなら平気だろうと俺はそいつの隣に肩を並べた。

「よっ、ジュリオー」
「えっ……アリシア、…?」

ジュリオはこれでもかってくらいに目をがん開いて俺を凝視した
ジュリオが入ってる部屋の担当は俺には回ってこないから、久しぶりの顔合わせだ。

一年、くらいか?どちらも忙しくて中々会う機会なんて無かったから当然だけど、刑務所の中でコンニチワするなんて考えてもみなかったのだろう。

「ほんとに、居た、んだな……
俺、……凄く、会いたかった、…」
「俺も!
久しぶりじゃんかよー、背ぇ伸びた?」
「い、いや。そんなには……」
「じゃ、痩せたんだろ?」
「う、ん。少しだけ…」
久しぶりに見たジュリオは、なんだか身長が伸びている気がした。余計な肉なんて無いのに、これ以上なんで痩せるんだかまったく分からん。が、元気そうで何よりだ。
相変わらず一途に慕ってくるジュリオが可愛くて仕方ない。
あーあ、嬉しそうに頬染めて……。
ケツに尻尾でもついてんのかと錯覚しそうだ。きっと付いていたら、ちぎれるんじゃないかって位に振り回しているのだろう。
可愛い。……あんまり可愛かったから、俺は背伸びをしてジュリオの頬っぺたを親指の腹で撫でてやった。頭は届かないけど、顔だったらぎり届く。

「っアリシア!」

ジュリオは、これ以上の幸せないって程の笑顔を見せてくれた。

「おー、まじで久しぶりだな。可愛い、可愛い…」
「そんな………アリシアの、ほう、が…可愛い…」
「馬鹿言うなよ
可愛いなんて言われたって嬉しくねーって」

可愛いなんて、悪口とおんなじだ。
俺はヤクザで、しかも幹部候補
男に媚び売ってのしあがって来た訳じゃないのだ。みくびらないで欲しい。

………ただ、悪気がないのは分かっている。
ジュリオはいい奴だし、信用してる。俺の事を手放しに誉めたりすんのは、それなりに理由があるわけで……。
普通に着飾って、可愛らしく振る舞っているただの女だったら喜べたろうに。
苦笑すると、しょんぼり肩を落とすジュリオ。どうやら、困らせたと感じたらしい。

今、コイツが人殺すのが大好きのマッドドッグだって言いふらして何人のカタギが頷くだろう。
狂犬なんて考えもつかないこの態度。
久々の可愛らしい犬っころとの触れあいに、俺ははしまりない顔を晒しながら有意義な時間を過ごした。


「外に出たらほっぺた落ちるくらいのサンデー食べにいこうな」
「……や、くそく?」
「おう……(可愛いなコノヤロー…)」






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