文章

□続・善法寺伊作の一途な片想い
1ページ/1ページ

これの続編
※夢主が乱太郎の姉ちゃん
※食満視点
※普通にカタカナとか使います
※ギャグなので






忍たま五・六年とくのたま上級生の合同授業と聞いて、忍たまは戦慄した。こんなこと今まで一度もやったことなかったのに、学園長先生の思いつきには本当に度肝を抜かされる。くのたまと聞けば条件反射で身構えるのは忍たまほぼ全員と言っていい。しかしくのたま上級生の人数は忍たまより少ないから、忍たまだけで構成される班も出来るとのことでコレばかりは運頼みだ。俺はくのたまと当たらないことと、親友の恋路の応援も願いながらクジを引いたのだった

『食満と竹谷ね。今日はよろしく』
「よろしくお願いします!」
「おう…よろしくな」
結果はこれだ。願いがひとつも届かなかった。つーか跳ね返ってきた。くのたまと一緒だわそれが親友の好きな女だわで、すべて跳ね返ってきた。離れていても感じた伊作のおどろおどろしい空気がやべぇ。いや、まあ…とは言え伊作の不運を思えば猪名寺と同じ班になるのは無理だったと思う。と言うか、まず伊作の班は忍たまのみの班だし。女子との繋がりさえ無かった

『他の班はザッとしか見れなかったけど、私達はわりとバランスが良さそうよ』
他の班が周囲に居ないことを確認して、猪名寺がまず口を開いた。今回は先生方が張った罠を潜り抜け目的地までいかに早く到着するか、班対抗で争う授業だ。武器の使用に制限がないので、これはかなり荒れるだろう
「鳥、飛ばしますか?」
「もう少し待ってからだな。まずはどう言うルートを辿るか決めよう」
『最短はコッチだけど、その分罠の数も多そう』
「他の班も集中しそうだしな」
伊作の応援をしたいが、まずは授業を優先させないと。気持ちを切り替えて話し合いを始める。確かに俺たちの班はバランスが良いと思う。俺も竹谷も動けるほうだし、虫獣遁を使える者が居るのはかなり有利だろう。それに、伊作からの情報で猪名寺が優秀なことも知っている。そもそも、最上級生のくのたまは人数が少ない分、精鋭揃いだ。だからこそ、同学年の俺たちはしこたま恐怖を植え付けられてきたのだが、今は仲間なのでその件は置いておこう
「ふむ。周り道も悪くないが…この三人で動くなら最短ルートでも行けるだろうな」
『うん。竹谷の鳥を飛ばして様子を伺いつつ進むのが定石ね』
「はい!」
竹谷の指笛に反応した鳥が羽ばたくのを送り終えてから俺たちも動き出した

「その、猪名寺先輩って乱太郎のお姉さんなんですよね」
『そうよ。乱太郎を知ってるの?』
「はい!同じは組の三治郎と虎若が同じ委員会なので」
『ああそっか。確か一年生ばかりなんだっけ?大変ね』
「いえそんな!確かに忙しいですけど、みんな頑張ってくれてますから」
『それは竹谷が良い先輩だからだよ。だから後輩達がついて来てくれるの』
「!あ、ありがとうごさいます…!…あの、先輩にも手伝って頂いて、それも、ありがとうございます」
『たった2、3回でしょう。気にしないで』
「で、でも俺、嬉しかったんで…」
『そう?なら手が空いてるときにまた顔出すわね』
「はっはい!待ってます!」
「……」
…え?竹谷さん?え?
いや、竹谷これ猪名寺のこと好きじゃね?ぐいぐい行ってんじゃん。めちゃくちゃキラキラした顔で猪名寺のこと見てんじゃん。と言うか、この二人が接点あったことにも驚くんだが
「…お前らって知り合いだったのか」
「はいっ!俺が一年生のとき、怪我してるところを助けて頂いて…!」
『おぶって保健室連れてったんだよね』
「恥ずかしながら…」
『私あの頃周りより成長早かったから。さすがに今は無理ね』
うわ伊作と似たようなシチュエーションじゃねーか。これ竹谷完璧好きだろ
「い、今は、俺が先輩おぶりますよ」
『じゃあ、そうさせるような怪我はしないようにするわ』
「あっ!そんなつもりじゃなくて…!」
『ふふ、わかってる。あんな昔のこと律儀に覚えてなくていいのに』
「いえ…。俺にとっては大事なことですから」
えぇ…サラッとアピールしやがった…。こいつ伊作より可能性有るんじゃねーの。ここまでの間で伊作の六年間より猪名寺と会話してるだろ。どうすんだよ伊作。不運で喋れないとか言ってる場合じゃねえぞ。お祓い連れてくか?

「…!あっちに誰か居るみたいです」
「!」
『!』
竹谷の飛ばした鳥が情報をくれる。気配を殺し、ぎりぎりまで近づく
「(小平太か)」
「(それと…平助にくのたまの…)」
『(あの子、足速いから黙って先に行かせられないわ)』
「(小平太も体力オバケだしな)」
「(平助も、い組なだけあって二人について行ってますね)」
口を閉じ、視線と矢羽根で会話する
「(だが小平太とやり合ってたら他の班に先越されるぞ)」
「(どうします?ほかの班とやり合わせます?)」
『(何言ってるの、一瞬で仕留めればいいだけじゃない)』
「(え)…!?」
なんて事無く言いのけた猪名寺へと思わず顔を向けて、猛烈に後悔した。にんまり笑うその顔は、俺たちの代の忍たまを恐怖に叩き落としてきた顔だ。小平太死んだな
「(でも相手は七松先輩ですよ。さすがに一瞬ってわけには…)」
『(叩きのめす必要はないわ。一瞬怯ませられたら追い抜ける)』
とか言って四年生のとき小平太を叩きのめして二日ほど寝込ませてたけどな
「(なら小平太は任す。あとは作戦・参でいこう)」
「(はい)」
『(了解)』
小平太、お前の屍を乗り越えて俺は行くぞ





『七松みぃつけた』
そこらの怪談話よりよほど恐ろしいと、小平太の背後に周るなんてさすがだななんて思うより先に浮かんだ。あえて声をかけたのは、相手が忍たまでしかも小平太だからである。見知らぬ相手であれば当然こんなやり方はしない。はっきり言って、こんな事されたら仙蔵や長次だって動揺すると思う。文次郎なら腰を抜かしててもおかしくないし、俺だって足が震える。伊作は…たぶん木から落っこちるかな。それくらい、くのたまの同学年に植え付けられた恐怖は甚大なのだ
「ひっ…!」
耳元で囁かれた小平太は、まるで死の宣告でも受けたかのように一瞬で顔を蒼くさせた。その一瞬の隙を許すはずもなく、猪名寺は小平太を蹴り飛ばし苦無で木に張り付ける。そしてその木から竹谷に仕込ませた毒虫達が大量に落ちてきて、小平太にまとわりついた。班の中で核となる人物への強襲で、久々知とくのたまも動きを止めた。そこを俺と竹谷が襲い、三人がバラけるよう誘導する
『七松、授業が終わったら私が作った解毒薬、飲んでくれるよね』
「…!!!?」
まさかの授業後にも待ち受ける仕打ちに小平太は白目を剥いた。……。知ってるか?こいつが伊作の片想いの相手だぜ?ついでに言うと竹谷の片想いの相手でもあるんだ。「かっこいい…!」って竹谷お前、自分に被害が無いから言えるんだぞその台詞…!俺たちの代のくのたまはな、ここ数年で一番えげつない代だって先生方が仰ってたんだぞ!たった一年違うだけのくせに護られる対象になったお前にはわからんだろうがな!
『えい!』
猪名寺が煙幕を投げつけたのが最後、俺たちは素早くその場を後にした。安らかに眠れよ小平太

結果、俺たちは一位で目的地に辿り着くことが出来たのだった

「と、留三郎っ!はぁはぁ…!すごいっ!一位だなんて、やっぱりい、猪名寺さんが居たからだよねっ!?」
授業が終わり、満身創痍な伊作がすごい勢いで近づいてきた。ボロボロではぁはぁ言ってるくせに顔を輝かせている
「おい落ち着けって、お前ボロボロだぞ!?まず手当てしろよ」
「こんなのいつものことでしょ!それより猪名寺さんの活躍聞かせてよ!かっこよかったんだろうなぁ〜」
うっとりしてる伊作にかなり引く。恋が忍者の三禁とされてるのがなぜかわかった気がした
「…でもまあ、確かに猪名寺のおかげで小平太をあっさりクリア出来たからな」
「さすが!小平太とやり合えるなんて猪名寺さんは本当にすごいなぁ〜!」
『そんなことない、チームワークが良かったおかげだよ』
「っだあ!?わわっ…!いいいい猪名寺さんっ!?き、聞いてたの…!?」
背後から想い人に声をかけられ、伊作は変な声を出して飛び上がった。俺は気づいてたけどな。せっかく会話出来そうな機会だから放置した。頑張れ伊作、せめて今日の竹谷の半分でも会話するんだ
『食満お疲れ』
「おうお前もな」
『善法寺もお疲れ。またずいぶんボロボロになったね…』
「ああああのっ、こ、これは…木から落ちたり獲物用の罠にハマったりしてたから…」
『大丈夫?よくそんな擦り傷程度で済んだね』
「こいつ不運だけど悪運強いんだよ」
どんな不運な状況からでも生還出来るその生命力は本当にすごい。猪名寺も納得したように頷いた
『あ、コレ使う?』
おもむろに懐から小さな容器を取り出す猪名寺。……おいちょっと待て、それって…
「お、おい…それは小平太にやるヤツじゃ…」
『あぁコレは違うやつ。七松のはコッチ』
「え…?こ、これって…?」
『傷薬の軟膏。保健委員に使ってもらうって緊張するけど、出来は良いよ』
「…!!い、いいの…!?」
『その代わり保健委員特製の軟膏作ったら少し分けてね』
「もちろんだよっ!」
『じゃあ私、七松のところ行くからまたね』
「あっい、猪名寺さんっありがとうっ!」
両手で容器を握りしめて頬を赤らめる伊作に、片手で返事をして颯爽と去っていく猪名寺
「…男女逆かよ」

「こんなの…宝物だよ…」
感動に打ち震え乙女よろしくポーっとする伊作だが、よく見てほしい。迫り来る猪名寺に気づいた小平太が半泣きでガタガタ震えている姿と、離れたところから猪名寺に熱視線を送る竹谷…と、久々知が増えたこと。六年目にしてやっと気づいた。この恋は前途多難だった
「…伊作お前、とりあえず次の休みにお祓い行こうぜ」
だけど応援しようとする俺はすごく良い奴だと思う

小平太の墓も作ってやるから安心しろよな

































だってだいすきなの



(六年みてきてるからな)(五年よりも長いんだぞ!)




























ーーーーー
おまけ↓(小平太・仙蔵・留三郎)

「…うぅっ…!ここまで酷いめにあったのは四年生のとき以来だ…!わ、私はもう!合同授業なんて認めないっ!」
「落ち着け小平太。学園長先生の思いつきなのだ、仕方なかろう」
「仙蔵の言う通りだぞ。それに…ホラ、授業中だったから手加減してたみてーだし…」
「留三郎はいいさ!仲間だったものな!」
「そ、そっちにもくのまた居たじゃねえか…」
「私の班にも居たぞ」
「だけどくのたまが居る班に直接襲われたのは私だけだ」
「……」
「……」
「みんな罠を仕掛けたりしてただけだ」
「…そ、その罠だってかなり過激なものだったんだぞ」
「そ、そうだぞ、文次郎の野郎はハマって目的地に辿り着けなかったくらいだ」
「目的地…!ヤメロ!あの恐ろしい解毒薬を思い...出した!一体アレはなんだったんだ!?カメムシでも入れたのか!?一昨年死んだばあちゃんに会ったぞ!?」
『あら、良かったじゃない。成長した姿を見せられて』
「!?!?」
『あの解毒薬…効いたみたいね。熱も出なかったでしょう?上々ね』
「…、…!!!」
「お、おい…」
「…あまりからかってやるな」
『久しぶりだったからつい』



くのたまってこうなら良いなって思ってる。全然伊作の片想い関係無いんですけどそれは…。



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ