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□赤いスカーフと涙
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「大丈夫か?」


あの後私は麦わら帽子の彼による高速移動と船による空中移動に耐えきれず吐き気を催した。と言っても朝食はいつもどおり固いパンと水だったためぶちまける失態は無かったが、スーツを着た男の人に抱えられて小さな動物を先頭に病室のような部屋に連れて行かれた。
小さな動物の診断によると、極度のストレスによる疲労と栄養失調らしい。まあたまにはパン以外を貰っていたけど、基本的にはいつも同じだったからそりゃそうだろう。
彼は中に入って来ようとする麦わら帽子の男の子達に休息が必要な患者だと一喝していたので、今部屋にはこの動物と二人きりで静かだった。

私は小さく頷くと、だんだん重たくなっていく目蓋に素直に閉じる。


「点滴が終わるまで眠った方がいいからな。目が覚めたらサンジに暖かいスープを作ってもらおう」


そっか…
やっぱりこれワンピースの世界そのまんまなんだ…


薄れゆく意識の中で彼が呟いた独り言とも取れる言葉は、私をアッサリと納得させた。



















「……!!」
「……」
「…!?………!!」


ふと、目が覚めると自分がいつもいる部屋とは違い驚く。
そうだ…『ルフィ』があ
の船から出してくれたんだ…
まだフワフワとした意識の中でまた隣から聞こえる口論に気が付いた。
私はベッドから降りて声のするドアへ歩くが、足が覚束なく正面から派手に転んでしまった。

いったぁ…っ!

痛みに悶えていると倒れた音に気付いたのか、目の前のドアが向こうから開かれた。そこから駆け込んで来た小動物『チョッパー』に私は助け起こされた。


「まだ寝てなきゃダメだ!今までかなり衰弱してたんだぞお前!」
「いや…起きたんなら話は早ぇ」
「そうね、私達がどうこう話してるより彼女に聞いた方が確かよ」


どうやら私の事で揉めてたらしく、チョッパーはガンとしてそれを認めなかったようだ。チョッパーはまだ私を休ませる事を主張しようとしたが、私はそれを遮った。彼の言い分はとてもありがたかったが、私も今の状況をキチンと理解したかった。
私は膝に手を置き立ち上がろうとすると、左側からゆっくりと優しく支えて起こしてもらった。金髪のスーツ『サンジ』だ。


「無理しちゃダメだぜお嬢さん。しっかり俺に掴まりな」


私がぺこりと頭を下げて遠慮なく掴まらせてもらいソファへ座ると、今暖かいスープ出すよとキッチンへ向かった。チョッパーは
私の隣にかけてくれた。


「じゃあまず単刀直入に聞くけど、あなた***で間違いないわね?」


ショートヘアでオレンジ色の髪の女の子『ナミ』が私の名前を確認した。私は素直に頷いた。ナミは何故か嫌な顔をして気のない声を出した。


「まぁいいわ、私達があなたを助けた理由は簡単。私達の船長が『彼』に頼まれてしたことよ」


ナミが私の前にかざした物は時間を止めるには充分な物だった。









血に塗れた、赤いスカーフ。







 
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