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□ゾンビとドクトル
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いったぁ…っ!!

あまりにも興奮状態が止まなかった私達は、前方不注意の為当然のごとく島に乗り上げ、更にその奥にある大きな溝に落下した。ゴルフで言うならばホールインワンだ。

したたかに打ち付けた右腕をさすりながらゆっくり起き上がると、みんなは既に立ち上がって当たりを見渡していた。私も立ち上がろうと地面に手を着くと、スッポリ人差し指が何かに入ってしまった。ありゃ?と視線を下ろすと、まぁそれは入っちゃいますね。白骨した頭部の目の位置にワタクシめの指が御免遊ばしてますもの…

ぎゃああぁああっ!!

私は全力で後方へ後退りし、その道全体に骨がとっちらかっているのが分かり全力でナミへ方向転換した。


「きゃ!おっ…驚かさないでよ***!アンタ怪我無い?大丈夫?」


ナミはいきなりくっついてきた私の両腕を取り、怪我は無いか確認してきた。私は大丈夫という意味を込めて頷いた。


「くそ…地上の海岸って…どっちへ行けば…ん?」


ウソップやチョッパーが辺りをキョロキョロと見ていると、奥から犬のような鳴き声が聞こえてきた。ま、まさか…


「…いっ…犬じゃない…!!」


仄暗い闇からのそり、のそりと姿を
表した大きな生き物。狂暴かつ獰猛な3つの頭を持つ地獄の番犬。


「ケルベロスーーーッ!!!」
「えええ!!?」


私達は全力をもってケルベロスとは反対へダッシュする。焦ってはいけないのは分かってる!でも気持ち悪いし襲ってきてるし足場悪くて転びそうだし、何より怖いっ!!

走るのに精一杯な私とは反対に、ナミ達は走りながらもケルベロスについて会話をしている。もうアンタら凄いよある意味!しかもキツネ一匹混じってるしね!ヤツが怒るから言わないけどね!


「…って、一匹キツネじゃねェか!!!」


だぁあ!!突っ込んじゃった!私は3人を無視してなおも走る。だって体力は普通の女だからみんなより余裕無いもん!

もちろんキレたケルベロスはゴーンと鳴き声を直しまた襲いかかってきた。3人はもの凄いスピードで私に追いつく。ほらね!所詮私一般人ですから!

階段を上がり生い茂る森へ入り、太く大きな木を見つけ私達は駆け上った。よじ登る、では無く完全に走る延長線のように“駆け上った”のだ。人間ってやれば出来るぜまったく!

私達は枝に座り息を殺した。ケルベロスは私達を見失い、のしのしと私達のすぐ下を歩行している。幸いあのケルベロ
スはゾンビだから鼻は利かない。

ただ、これで助けを待つ選択肢は無くなった。そして私のちっぽけな体力も無くなった。
いまだにハアハアと息が荒い私をナミは背中を撫でて気遣ってくれた。


「どうしよう…だいぶ森へ入り込んじゃった…」
「あんなのが歩き回ってるなら目立つ場所で助けを待つのも大変だぞ」
「まったくでしね」


ケルベロスが去るのをジッと見ていると、聞いたこと無い声が参加している。でも私は知っている。



“彼”の生み出したゾンビ、ヒルドン。




彼は優しい声音で私達を屋敷へ向かう馬車に招き入れた。
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