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□男の戦いと女の友情
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なんだか首が痛くて、私は体を捩ろうと試みるも私の両腕が何かで抑えられているように動かす事が出来なかった。

私はゆっくりと目を開けると、目の前には大きな十字架や独特の配色が美しいステンドガラスなど、一目で教会とわかる風景が飛び込んできた。その真ん中には輝く程に純白のドレスで身を包んだとても綺麗な花嫁。ナミがゾンビに支えられてアブサロムと向かい合っていた。

さっきまでは逃げ出す為に階段を下りてた筈なのに…!!
てか展開が速すぎてやばい!!止めなき…うわぁ!?

私は立ち上がろうと足に力を入れ腰を浮かすと、両腕にグッと圧力がかかり再び着席した。両サイドに目を配るとゾンビが私を押さえつけていて、大人しくしていろと叫ぶ。

私自身も服を着替えさせれていて、パニエが入っているようにブワッと広がったスカートに肩から胸元にかけてリボンのような形の淡い黄色のミニドレスで、靴もドレスに合わせて綺麗な黄色のヒールだった。いや、可愛いけどね!!着れて嬉しいけど今そんな感動いらないからね!!

ちょっと小奇麗な格好に喜んでいると、足元は何故か地震がおきているように大きく揺れ、教会内にいるゾンビ達がどよめいていた。

どうやらルフィの影が入ったオーズが外で暴れているようで、その影響が島全体に及んでいるらしい。ナイスハプニング。

「将軍ゾンビ!!今すぐ出撃せよ!!オーズを止めろォーーーー!!!」
「はっ!!」

ゾンビ達は一斉に教会から出て行き教会にはアブサロムとナミと支えるゾンビ、神父役のゾンビと私に私と抑えるゾンビと減少した。

もう少しすれば必ずサンジが助けに来てくれる!!それまで何とか時間稼ぎをしたいけど…っ!!

私は胸元にホイッスルがあるのを確認し、それを銜える為にいきなり俯いた。両腕を掴むゾンビは急に私が前のめりになったのに驚き掴む力が緩む。チャンス!
ダイヤルは既に10に設定してあったのでそのまま息を吸い込み全力で吹いた。教会では特に音が響く構造の為、私のホイッスル音はステンドガラスが悲鳴を上げる程に轟いた。

もちろん吹いた私にも影響が及び、頭がビリビリと痺れるような痛みに襲われるも、ゾンビを振り切ってナミの元へ走り出す。

ナミを支えるゾンビはちょうど私の真正面にいた為に私の音をまともに食らって自身の両耳を抑えて悶えていた。倒れるナミを助け起こすと、ナミも目をグルグルと回して気絶したままだった。わぁあごめんナミ!!

そのままナミを引き摺って祭壇から降りようとすると右腕に強い力で掴まれ、あまりの痛みに顔をしかめる。顔を上げるとアブサロムが私をもの凄い形相で睨んでいた。

ヤバイ…!!早く振り切らなきゃ…っ!!

私はもう一度ホイッスルを吹こうと息を吸ったらアブサロムは素早く私のホイッスルを取り上げ、力の限り参列者席側へ放り投げた。

「なめたマネをしてくれるな小娘よ…と言っても、今の笛が無ければ何も出来ないただの弱弱しい小娘だが、な!!」

アブサロムは言葉の最後に私めがけて拳を振り下ろした。私はナミから剥がされ最前列の参列者席へふっ飛ばされた。

アブサロムの拳はちょうど首に巻かれた首輪に直撃し顔半壊は免れるも、あまりの衝撃に喉が耐えられず呼吸、そして全身を打ちつけ自力で起き上がる事も出来ない。


無理やりに吐くよう咳き込んでみると、酸素がなんとか肺へ送り込む事ができた。全身の痛みと心臓がドキドキと激しく鼓動し、今の危険な状況を充分に知らしめた。ああ、目の前がチカチカと星が舞う。


「さあお前達!!その小娘を捕らえよ!!その小娘とセットで初めて私の結婚式は成功するのだからな!!」
「はっ!!」
私はゾンビによって起こされ再び捕まった。唯一の武器であるホイッスルは手元に無い。まさに無力な小娘だ。



こんな私が今みんなの足を引っ張るお荷物として突っ立っている。ナミを助ける事も出来ず、ただ助けを待つだけの、馬鹿な女。

「おい!しっかり立ってろ!!」


ゾンビは私の腕をグッと持ち上げ体を祭壇に向かせる。その勢いでまた咳き込み、その際に首元からパラパラと『何かのクズ』が落ちている事に気付いた。


未だに苦しい呼吸を繰り返しながら私は自分の使えない能力を思い出し自嘲する。


前まで死にたいほど嫌がってたのに、今になってこんなに必要としているなんて…ホント最低だ、私…

私は荒い息を繰り返し何度か咳き込むも、声を出そうとささやくように発してみた。




「…っ、…a、…ぁー…」











なんだ、出るじゃん。













私は今から反撃できる喜びに口元が緩むのを我慢出来なかった。




体は先ほどアブサロムにやられて背中にズキズキと痛みが走り、手足も参列者席の破片にぶつけて所々から血が滲んでいる。正直立っているのがやっとだ。

ただ呼吸は安定し始め、声も震えているがささやき程度には出る。









それで、充分だ。










「…『離して』」





私はゾンビに向かって『命令』した。
ゾンビは弾かれるように私から離れ教会の壁まで飛んでいった。













この時、自分の能力復活に心から歓喜した。
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