翡翠の瞳 深紅の眼
□第11章 暗がりに『鬼』を繋ぐ
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序文
照り付ける太陽…、白い浜辺…、美しい脚の踵は懸命に波打ち際を蹴っていた……。
オフホワイトの、セパレート水着を着用した女性は、はぁはぁ…と息を切らし水平線の向こうを見た。
翡翠の瞳は、焦燥感を浮かべながら、銀の鱗のように光る遠くの海面を映す……。
日没まで、約5時間……。
銀の鈴が鳴るような声は、息を整えた後こう言った……。
・・・ ・・・・・・・・・・・
『みんな、いったいどこに消えたの?』
彼女は手にしていた、『紙』を開いて見た。
もう、何度も読んだ跡のある古びた紙には、詩のような…童謡のような…謎掛けのような文章が書いてある。
岩肌に、荒々しい波飛沫が打ち付けられ、小さな蟹がそれを避けるように動いた。
裸足の足は再び駆け出して、白い砂浜の波打ち際に小さな足跡を残す。
打ち寄せる波は、そこに人がいたという一切のことを消し去り、何事もないように海の彼方からその音を運んでくるのだった――。
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日曜に島を出た忍は、
海月の毒に打たれて死んだ。
月曜に島を出た忍は、
人魚のミイラに襲われ死んだ。
火曜に島を出た忍は、
砂浜の貝を拾えず埋められて死んだ。
水曜に島を出た忍は、
光る花の火に巻かれて死んだ。
木曜に島を出た忍は、
炎の分身に乗っとられて死んだ。
金曜に島を出た忍は、
鯨を追い掛け喰われて死んだ。
土曜に残った最後の忍、
銀のお船に金の櫂…、
海に漕ぎ出し行方が解らず、そのままいなくなった。
そうして、島は元の無人島…、あとは、だぁれもやって来ない。
暁に、海猫の鳴き声が響くだけ……。
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